旅のレポートへ


 

雪見湯紀行

 

〜冬の奥鬼怒を訪れて〜


 

 

2005年1月29日〜30日

1泊2日で奥鬼怒にある川俣温泉に行ってきました。

 

宿泊先は「ふくよ館

冬季限定の特別宿泊プランを利用しての宿泊です。(これはかなりお得!)

 

観光は一切せず、旅館の中で1日中くつろぎ、宿自慢の露天温泉を堪能しました。

また休日だというのに、宿泊客が少なかったため、静かにのんびりと身体を癒すことができました。

 

*左写真はふくよ館様のHPより転載させていてだいております。

 

            1月29日(土)

            午前9時半頃家を出る。外はまあまあのお天気。

            これから浅草駅から東武線に乗って、鬼怒川温泉駅に行くのだ。行き先は以前から行きたかった奥鬼怒にある川俣温泉。

            宿泊場所には「ふくよ館」を選んだ。

           

            浅草駅に到着後、特急券を購入。その後、電車の中で食べるお弁当を買おうと思い松坂屋に入る。そこでお茶と御寿司を購入。

            特急は全席指定席なので慌てる必要がない。出発時間5分前に電車に乗り込む。

            が、席が団体客と重なってしまった〜。1両ほとんどが彼らでしめられている〜。う〜ん、ついていない。

            うるさいよ〜。騒がしいよ〜。席を替えてもらおうと思ったが満席のためそれは不可能だった。くそっ!

            うるさい団体客から目をそらしながら、窓の風景を見ながら買ったお弁当を広げて食べる。

            天気が良いので窓から見る景色は素晴らしかった。景色はね・・・・。

            しかしなんで団体客って、外の風景を楽しまないんだろう???

            しゃべってばっかり・・・。それだったら旅行に行く必要ないと思うけどなあ・・・。

            とまれ、午後1時過ぎに鬼怒川温泉駅に到着。東京浅草から約1時間半。あっという間だった。

 

            でもここからさらに2時間のバスの行程がある。駅前のバス亭に向かうと、人がたくさん並んでいた。

            ちょっとびっくり。え〜っこんなにたくさん、すわれないよう。。。でも、なんとかわしは座れた。

            けど立っている人もいる。これから2時間もこんなぎゅうぎゅう詰めのバスの中にいるのかなあ。

            やだなあ、なんて思ってたら、すぐ次の駅でもう一台別のバスが用意された。うーん、臨機応変、感心感心。乗客の半分がもう一つのバスに移る。

            バスの中はすっきりし、車窓の風景も楽しめるようになった。電車の中にいたうるさい団体客もいない。ゆったりと自分の世界に入れる。

            やっぱ旅はこうでなくっちゃね!

 

            出発後1時間の距離のところで15分ほどの休憩がはいった。お手洗いのため下車。外は雪が積もっていた。かなり深い。

            降りたとたんずぼっと音を立てて足がめりこんだ。雪は降ってはいなかったが、あたり一面は真っ白だった。

            休憩終了後、バスはさらに奥地に向かってすすんでいく。

 

            車窓の景色は素晴らしかった。雪・雪・雪・・・である。白銀の世界が広がっている。言葉に表せない。

            ため息の出るような風景だ。ギュスターヴ・クールベの絵画の中に迷いこんだかのよう。

            過去見た雪景色の中で一番美しかった。うっとりと、車窓の銀世界によいしれながら、バスに揺られてさらに1時間、ついに目的地に到着した。

 

            停留所「ふくよ館前」で下車。ふくよ館は本当に目の前だった。ここでバスから降りたのはわし一人だけだった。

            足元の雪はさっき降りた休憩所のときより深く積もっていた。雪になれていないわしはふらついて、つんのめりにそうになった。

            バスはわしを置いてさらに奥地へと進んでいく。皆どこにいくんあろう。白面の世界に消えていくバスを見送った後、「ふくよ館」に入る。

            し〜ず〜か〜。しーん、としている。館の外も中も雪で音を消されてしまったかのよう。ロビーには誰もいない。

            無人営業旅館といっても通りそうだ。フロントに行き、チェックインする。その後部屋に案内された。

 

            部屋に通されてまずびっくり!綺麗で広い!一人でこんなところ使っていいのかなあ、なんて少し申し訳ない気持ちになった。

            障子窓を開けて外を見る。うーん、絶景。雪に覆われた山が目の前に見えた。ひとしきり、部屋からの探索をし終わったあと、露天風呂に向かう支度をする。

            合計4時間の移動と、雪国に入って寒さを癒さねば。浴衣にきがえ、タオルを持ってLET’S GO!

 

            館内は来た時と同様静かだった。静かすぎるほどだった。自分の足音がやけに耳につく。

            他の客はまだ到着していないらしい。と、するとお風呂は貸切状態に・・・・・???

            長い長い階段を下りていく。長い長い階段を・・・・。長い長い・・・・。本当に長いっ!半端じゃなく長い!おまけに急で怖い!

            しかも人一人上り下りするのがやっとというくらいの狭さ。反対に人が登ってきたら、、立ち止まってお互い譲り合わなければ通れないだろう。

            しかもみしみし音を立てて辺りにこだましている。壁には泊り客の手紙や写真、有名人の色紙などが飾られている(お約束やね〜)。

            階段を下りる。ひたすら降りる。ふと、怖くなった。今は降りてるけど、帰りはこれを・・・。恐ろしい疑惑をよぎらせながら階段さらに下りていく。

            降りる。ひたすら降りる・・・。と、階段の切れ目が見えた!脱衣所だっ!やったついに到着したぞ!長かった!本当に長かった!

 

            階段5階分(おおげさじゃないよ)おりただろうか?ともかく到着した。お風呂は脱衣所の脇に内風呂と、扉の外に露天風呂があった。

            案の定誰もいない。今の時間は混浴なので、誰か後から入ってくるといけないので、バスタオルを巻いて露天風呂に向かう扉を開けた。

            ひゅうっ!すんげー寒いっ!寒い!寒いっ!風がわしの裸身を吹き付けた。急いで、風呂に飛び込む。一瞬全身に鳥肌が立つ。

            だがそれも一瞬のこと。あっという間に快感に変わる。きんもちいい〜。あったけ〜。誰もいない貸しきり状態なので、バスタオルを外し、全身を伸ばす。

            風呂は岩作り。10人くらい入れる大きさだ。その風呂を一人で使っているのだ!最高っ!来てよかった!

            東京から4時間。そして青函トンネルに匹敵するような長い階段を下りたその先にわしは極楽浄土を見た。あの長い階段はこのためなのだ。

            ふと、目を上げると、さっき部屋の窓から見た景色があった。山が間近に見える。

            ・・・ということは・・・。わしは頭上を仰いだ。この上にわしが寝泊りする部屋があるのか・・・・・。

 

            山の麓、わしの眼下には美しい清流があった。川俣湖から注がれている渓流である。

            それを見てわしは深い感慨に襲われた。ああ、ついにきたのだ。かねてより訪れたかった川俣温泉に・・・。

            雪に覆われた静かなる世界に、渓流のせせらぎが響き渡る。耳に心地よく、胸の奥深くに沁みこんでくるようだ。

            身も心も浄化され、自らが白銀へと化身したかのような錯覚に襲われる。

            なんという美しい世界なのだろう。別世界である。ここだけ次元が切り取られたかのようだ。

            わしはゆったりと、湯に身を任て、景色を堪能しまくった。誰もいない、自分だけの静寂の世界に・・・。

 

            と、我にかえる。背後から足音と声がした。なんと、あの階段から声と音はここまで届くのだ。それほど静かだということか。

            声からすると、夫婦二人のように思えた。わしは岩壁においてったバスタオルをとって体にまいて外に出た。

            充分湯は楽しんだ。出ることにしよう。脱衣所で着替え、夫婦(やはりそうだった)二人とすれ違って、わしは部屋に戻った。

            あの長い長い階段を今度は登って・・・。ここの記述は省く。描かなくても様子は容易に想像できるだろう。

 

            部屋に戻ると、かなりの時間がたっていたのに驚いた。うーん、こんなに湯に使っていたのかあ。

            でも夕食までまだ時間はある。湯疲れしてしまったので、押入れから枕を出し、横になった。

            ちなみに補足すると、館内は遊ぶべき場所はない。小さな売店とバーがあるだけだ。またバーはそのとき開いていなかった。

            周囲は何もない上、雪に覆われてしまっている。冬以外の季節なら散策を楽しめることと思う。

            なのでTVを見るくらいしかない。観光を期待した宿泊は避けたほうが無難。冬はね。他の季節は楽しめると思う。

 

            そんなこんなでうとうとしていたら、夕食の時間になった。仲居さんが膳を部屋まで運んできてくれる。

            テーブルの上に次々と料理が並べられていく。うーん、ゴージャス。合計3回ほどのお運びだった。膳も重そうで、仲居さん息をきらしている。

            すみませんねえ。

 

            全ての料理が並べ終えられたとき、わしは悲鳴を上げた(心の中で)。なんなのっ!?この数!この量!?

            けっして狭くはないテーブルの上が料理の陳列でほとんどすきまがなくなってしまっている。こんな数多くの種類の料理、並べられたことなんてないよ。

            しかもみなものすごく丁寧に綺麗に盛り付けられている。芸術品といっていいほどだ。これを全部たべろってかっ???(実際全部綺麗に平らげたけどさ)

            料理は手元から扇状に並べられた。うっうつくしいっ!!芸術だア〜っっ!!

 

            山の動物の肉はコンロでぐつぐつ煮え、その横にはてんぷらが幾種類も盛り付けられており、おおっ!鮎が一匹丸ごと串刺し状態で出ている。

            左手元には花の形に切られた煮込んだ彩り鮮やかな野菜とおつけもの、そして手前には山の幸をふんだんに使った前菜がある。

            その斜め上にはおそばがある。ああっ!山の宿なのにお刺身が出てるよっ!信じられない。

            そして、お約束の茶碗蒸しはもちろんあり、味噌汁もあつあつでこうばしそう。左端のはデザート。なんだか御餅らしい。

 

            美しい料理の陳列をたっぷりと見とれた後、おひつからごはんをよそう。もちろん大盛りさっ!

            昼は電車の中でお寿司しか食べてないかかったので、腹は減りに減りぬいて胃と背中がくっつきそうだったし。

            ご飯をよそったのち、何から食べようか箸をさまよわせる。お行儀わるいな〜。まあ、誰もみてないからいいや。これぞ一人旅の醍醐味。

 

            肉はまだ煮えてないし、おそばを先に口にするのはちょっと・・・、ということで前菜から手をつけることにする。当たり前か。

            前菜を1つつまみ口にほおる。うーん、かりこりしておーいーしー。もう1つ口にいれる。これもおーいーしー。綺麗に前菜を食べてしまう。

            その後、その隣の野菜の煮物へ箸を伸ばした。お野菜を箸でこまかくきって、口にいれる。

            野菜は隅々まで汁がたっぷりとしみこんでいた。これを白いごはんと一緒にいただく。すんばらしい味わいだ。

            ここまで野菜をしみこませるのに、何時間くらいの手間がかかったんだろう。これだけで宿の人の深い心遣いがよくわかる。

            その後箸の手を、煮込んでいる肉の横にあるてんぷらへ移動させた。一品つまんで、汁にひたして口に運ぶ。

            ううう。さくっとしてかりっとしてあぶらもんなのにちっともしつこくない。おいしーよー。

            てんぷらを運ぶ箸の手が自然速度を増した。はたからみていたら、それは千手観音の手のようになっていただろう。

            そしていったん箸をおいて鮎に手をだす。かわいくそえてあるレモンをちゅっとしぼってふりかけて、くしをわづかんでかぶりつく。

            ううううう〜ん。じゅわっと口の中で音がたった。身がひきしまっててきゅっとしている。お〜いし〜い。渓流美の極致である。美しい清流にそだった鮎。

            最高の食べ時の材料を丁寧に仕上げてくれた。拍手喝采!若くひきしまった身に親父が懸想する気持ちがこのときよくわかった。

            餓えて欲情した親父が女子高校生にとびかかるようにして、わしは鮎を貪り胃に入れ込んだ。鮎のあった皿は一瞬にして、くしだけとなる。

            以前、鬼怒川温泉駅近くで鮎を食べたことがあったけど、これが同じ鮎かと思うほど味が違っていた。

            (別にそこの味をけなしているわけではない。そこのもうまかったが、ここはそれ以上なのだ)

            この鮎を食べるだけでも、ここにくる価値はあるあろう。っていうか、来て食べなさい。

            食べ続けたので、味噌汁を今度は胃に流し込んだ。ああ、上手い。五臓り六腑に染み渡るとはまさにこのこと。山の味噌汁ってうまいなあ。

            ちょっと胃が苦しくなった。あ、でも肉が煮えてる。ちょうど今が食べごろだ。殻になったご飯茶碗にまた白いご飯を大盛でよそう。

            ぐつぐつと煮立っている鉄鍋に箸を突っ込み、肉をつまみあげる。ゆげがほくほくとたっているいるではないか。香ばしい匂いが鼻につく。

            熱さを覚ますために、いったん白いご飯の上に肉をおいてから口にいれる。や〜わ〜ら〜いいいいっ!期待通りの感触と味。こんなに舌を裏切らない肉も珍しいよ。

            そんでもって白いごはんとあうんだ、これがまた。誰に取られる心配もないうのに、せっせと鍋から肉を取り上げて口運ぶ。

            一緒に煮込んであるお野菜も肉汁がしみこんでいい感じ。わしは汁一滴残さず鍋物を平らげてしまった。

            これで限界だった。もうはいんない。腹は妊婦のようにふくれ、料理は喉のところにつっかかっている。さすがに苦しくなって、体制を崩してそのまま仰向けになった。

            かなりお行儀悪いけど、ま、誰もみてないし・・・。仰向けになってTVを見ながら小休止。

            残るはお刺身とおそばと茶碗蒸しとデザート。温かいお料理ではないので、慌てる必要はないのだ。しかしわしの胃の消化力はかなり早い。

            食欲がまたむくむくともたげてきた。むっくりと体を起こす。そのとき、料理が体の下へすとんと落ちた気がした。よし、まだまだはいるぞ。

            重たい料理を立て続けに胃に入れたので、今度はおそばに手を出すことにした。ちゅるっ、と口に含む。固くてしこしこしてる。

            前菜もそうだったが、味はもとより山の幸は感触を楽しむために作られているようだ。このそばのしこしこ感もなかなかの味わいだ。

            普段食している麺ものはするすると流れ込むようだが、このお蕎麦は違う。しかもかみながら味が口に広がっていくのだ。これもまた汁を一滴残さずいただいた。

            次はお刺身だ。これを見て感動しない人間はいないだろう。なんてキレイなピンク色なんだろう。きらきらしているではないか。官能的でさえある。

            わしはまた白いご飯をよそった。三杯目。お刺身をつまみ上げ、そっとお醤油にひたし口に入れ、そしてすかさず白いごはんもほおりこんだ。

            ・・・・もう、何も言えない。最高に幸せだ。神様、ありがとう。余は満足じゃ。少し小休止したとはいえ、やはり腹ははちきれそう。

            宿の人に申し訳ないが、残りの茶碗蒸しは一口程度でおさめ、デザートはとっといて後で食べよう。果たして、そうはならなかった。

            茶碗蒸しの蓋をあけてさじですくって口に運ぶ。そこで終わりにする予定が結局全部たべちゃったよ。

            そんでもってお茶を飲んだら、甘いものが欲しくなってデザートの御餅も食べちゃった。おいしかったよ〜っっ。

 

            妊娠八ヶ月の腹と化したわしは、そのまましばらく畳の上で仰向けになった。腹が死ぬほど重い。でも幸せ。

            美味いものをはらいっぱいに食べることほど幸福なことはないと思う。

 

            幾分、消化が進んだ頃、時刻は7時をまわった。おっと、露天風呂の女性の時間帯になったぞ。

            この宿の露店風呂は朝と夜には女性の貸切時間があるのだ。その他は混浴。

            わしはむくっと体を起こし、バスタオルを手にして露天風呂へ向かった。

            またあの長い長い階段を下りて・・・・・。腹が重かったから、先ほどよりも辛かった(泣)。でもいい運動にもなることも確か。

 

            脱衣所で裸になり、外へ出る。びっくり!前の山がライトアップされているではないか。なんて美しいのだろう!

            雄大な自然に向けてあてられた緑の光が、夜の白銀の世界をくっきりと浮かび上がらせて美麗な幻想世界を作り出している。

            そしてそれはまったく自然の景観をまったくそこねていないのだ。わしははだかのまま口をあんぐりあけてその景色に見ほれた。

            うーん、写真がないのが残念。。。。

 

            おおっと、いつまでも裸でたっていられない。寒い寒い。慌てて湯の中に入る。うーん、あったかくて気持ちがいいぞう。

            昼間きたときとは違い、幾人かの他の客がいた。みな景色に見ほれてる。わしもへりのところに手をついて、景色を見続けた。

 

            女性貸切時間は21時まで。みなが風呂から上がり始めた。わしもそろそろと出る。景色も充分堪能したし。

            体を拭き浴衣に着替えて、またあの長い長い階段を上がって部屋に戻った。お風呂と階段運動のおかけで、腹は大分軽くなったけどさ。

 

            部屋に戻って窓のカーテンを開けた。ここからもライトアップされた景色が見れた。うーん、やっぱりキレイ。

            ご飯も食べたし、お風呂も入って景色も堪能したので、わしは仲居さんが敷いてくれた布団にもぐりこんだ。

            ふとんはぱりっとして清潔な匂いがしてとても気持ちいい。そしてうつらうつら夢の中にはいっていった。

 

            1月30日(日)            

            ふと、目を覚ます。12時くらいだった。何故かしらないがくっきり目が覚めてしまっている。お風呂にいくことを決意。

            当然のことだが、館内はしーんとしている。足音をたてないように歩いて露天風呂へ向かった。

 

            風呂には誰もいなかった。やった!また貸切だよ!飛び込むようにして湯の中に入った。

            残念なことにライトアップは終了していた。山は真っ暗でなんとなく怖い。昔の人が自然に畏怖していたのがわかる気がする。

            向こうの山の上に月が見えた。しかしそれも雲でだんだん見えなくなってしまった。ぽつりぽつりと降っていた雨が次第に大粒になってきた。

            まだ湯に浸かっていたかったがしかたない。雨が顔にあったって痛いのであがることにした。

            部屋に戻ってまた布団にもぐりこむ。しかしねつけない。温泉て脳を活性化させてしまうみたいだ・・・。

            そんなこんなで朝になった。あんまり眠れなかった。おなかがすごくすいている。

            夜二回もお風呂にはいったんだから当然か。しかもあの長い階段を通って。

 

            少し時間は早かったが、朝食に向かった。朝食は別の場所に大広間に用意されるのだ。

            支度はもうできていたので、早速席につかせてもらう。他の客たちはまだきていなかった。

            朝食はまたボリュームたっぷりだった。こんなに食べらんないよ、なんて思いながら結局やはり全部平らげてしまった。

            白いご飯とお味噌汁の美味しいこと美味しいこと。食事をとっていると次々と他の客たちがやってきた。

            数はそんなに多くなかった。全部で7組くらいか。休日なのにめずらしい。

 

            朝食をとった後、わしはそのまままた露天風呂に向かった。朝も女性の貸切時間帯があるのだ。

            再び裸になって外に出る。外は上天気だった。昨日の夜は雨だったというのに。頭上にはすいこまれそうな程の青い空が広がっている。

            朝の露天もまた雰囲気があってよい。渓流のせせらぎをかいくぐって、鳥のさえずりが響き渡ってくる。自然に還った気がした。

            ぎりぎりまで湯につかった。まだ入浴を楽しんでいたかったが時間だ。名残惜しげに湯から上がり、着替えて部屋に戻った。

 

            部屋に戻った後、帰り支度をしてフロントでチェックアウトをした。バス亭は目の前なので慌てる必要はない。

            バス到着時刻ぎりぎりに外に出た。恐ろしいほどの雪の深さだ。ずぼっ、ずぼっ、と足が膝まで食い込んでしまう。こんなんで車なんて通れるのかなあ???

            朝温泉につかったせいで、外に出ても寒くは無かった。バスを待っていると、突然目の前でTAXIが止まった。

            運転手さんが窓から顔を出し、バス料金でふもとまで乗せてってくれるという。わしは早速そのTAXIに乗っていくことにした。

 

            雪に埋もれた道に向かって車は出発する。さらば、「ふくよ館」。ここの料理は一生忘れないよ。

            来た時と同様の道を通って車は突き進んでいく。一面の雪景色の中を・・・。

    

            車窓の風景を楽しんでいるうちに、だんだんまぶたがおもくなってきた。そういえばあんまりねてないんだよなあ。

            温泉であったまったからだもなんかほどよく弛緩されてだるくなってる。うつらうつらしていくうちに、わしはついにぐっすりと眠り込んでしまった。

 

            駅間近になり、起こされた。わしははっと目を開け、外を見ると見慣れた駅の風景が広がっていた。

            あれほどあった雪がここにはまったくない。同じ土地なのにどうして・・・と思うほどだ。運転手さんにお礼をいって車から降り、駅に向かった。

 

            駅で特急券を申し込んだら、なんと満席だという。仕方ないので次の快速で帰ることにした。

            列車到着時刻まで駅前をぶらつく。ここは土産物やがひしめきあってるので、時間をつぶすにはことかかない。

 

            時間になり駅に向かった。到着した快速列車に乗り込む。運良く四人の席の窓際に座ることができた。

            車窓の風景を楽しみながらの帰途。天気が良いから景色はばっちりだ。窓にかかる日差しも暖かくて心地よい。

            わしは次第にうつらうつらしてきて、ついに窓によりかかるようにして眠り込んでしまった。

 

            気がつくと浅草駅、2時間の乗車時間だ。特急とほとんど変わりない。ひしめきあってうるさい特急よりも快速の方が断然良い。次回は快速でいくことを決意する。

            こうして観光一切なしのわしの冬の癒しの旅は終了したのであーる。しかし癒されたよ、ほんと。

 


先頭へ戻る