春風紀行～桜満開の秩父を訪れて～

東京駅で家族と合流。彼らが乗ってきた千葉からの電車は朝早いのにも関わらず大変混みあっていた。皆どこかしらのお花見に行くのだろう。

今日はちょうど一番の見ごろらしい。その上上天気だ。何処も花見客で混むに違いない。我々は電車を乗り換えて浜松町へ向かった。集合は７時１０分だ。

ツアー参加の手続きをすませ、バスに乗り込む。行き先は埼玉県の秩父。そこで川下りをしながら花見を楽しむのだ。なんと４４席のバスの座席は満席らしい。

それでも参加者の集まりは早く、予定より早く出発することができた。ここから池袋に向かい、そこでまたさらに参加者が乗り込むのだ。

池袋までの道のりはスムーズだった。朝早いせいかもしれない。窓からお堀の桜が見えた。満開も満開だ。

濃緑色の池の水面に浮かぶ桃色の桜の花びらが目を引く。ここも今日は花見客で混みあうのだろう。

予定の時間より早くバスは早く池袋に到着した。新たな参加者が乗り込んでくる。ここでも集まりが早かったので、また早めの出発をすることができた。

バスは進むバスは進む。恐ろしいくらいスムーズだ。花見に行く人たちで絶対に道は混雑していると思っていたのに・・・。これも日頃の行いがいいからなのね。ふふふ。

途中のインターチェンジで休憩に入った。バスから下車すると信じられないくらいの上天気！これはさぞかし花見が見ものだろう。着く前からわくわくする。

お手洗いを済ました後、店内へ入る。美味しそうなお菓子がたくさん並んでいる。しかもわしの大好きな芋でつくったやつだ。

そういえばここは埼玉に向かう（というか既に埼玉か）ところにあるインター。川越の地にちなんでいるんだろう。

美味そうな饅頭を焼いていたので購入してバスの中で食そうと思ったのだが、レジが混みあっていたのであきらめた。

インターは数多くの車が止まっており、店内には大勢の人がいた。このひとたちも皆花見に行くのだ。

外に出ると、そこで焼き鳥が売っていて、そこは誰も並んでいなかったので購入した。お値段は１本１４０円。当たり前といえば当たり前だけどちょっと高め。

バスに向かって歩きながら一つ口にほおり込む。美味しい！びっくりした。期待していなかっただけ感激した。こういうところって値段が高い割りに不味いことが多いのに・・・。

そういえばたったの１本しか頼まなかったのに焼くのに随分時間かかったもんなあ。焼き鳥を手にしたままわしはバスに乗り込んだ。

長瀞到着。桜が、桜がすごい！満開も満開だ。どの桜も木の幹が折れそうなほど花がめいいっぱい咲き開いている。しかし桜の鑑賞はあとあと。

まずは舟に乗るのだ。バスから下車したわれわれ参加者一同は、舟着場へ向かう。道の両脇には美味しそうな産物が並べてある店が連なっている。

しかし買うのはあとあと。つまみぐいはあとあと。まずはとにかく舟に乗るのだ。

舟に乗るための注意事項と長瀞についての長い説明をひとしきり聞き終わった後、我々は舟に乗りこんだ。満員も満員。ぎゅうずめにして座らせられた。身動きできんよ。

そんなこんなで出発。舟の前と後ろに舟員さんがのり、大きな舵を持って漕ぎ始めた。

わしは最後尾に座らせられたので、自然舟員さんの足が頭のところにくる。あたるんじゃないかと思われるほどの距離だ。漕いでいる舵もなんだか頭に当たりそう・・・。

そんなわしの心配もよそに舟員さんは語り始める。顔こそ笑ってはいるが、ちょっと説明は棒読みだ。日に何度も同じ説明しているからか。

わしは狭められた空間の中、周囲に迷惑なのも承知でぱしゃぱしゃ写真を撮り始めた。晴天ともあって周囲の景色はすばらしく、水は底が見えるほど澄んでいる。

だが、そのため川下りは実にのんびりしたものだった。スリルなんてちっともない。これが雨の後だったら水かさが増して、流れも速いものになったと、舟員さんは語った。

また水は澄んでいるのにも関わらず、川の中に魚を見つけることはできなかった。澄んでいてももやはり汚染されているのか？


↑ぎゅうずめの舟内	↑後ろに舟頭さんが漕いでいるのが見える

		↑水は澄んではいるものの魚は見当たらない

	↑可愛い野生の鳥たち

↑軍艦のような岩は迫力

	↑急流になりほんの少しスリルを味わえた

↑乗り慣れて来たせいか余裕の父

	↑ものすごく大きい岩	↑到着点間近の地点にある「カエル岩」

きっかり３０分の舟下りを終える。ゆったりとした舟の旅だった。スリルを求めていた人はがっかりしたかもしれない。

到着地には既にバスが待機していた。我々はそれに乗り込む。今度はこのバスに乗って出発点まで戻るのだ。

我々を乗せた舟はクレーンで持ち上げられ、これまた待機していたダンプに乗せられてまたもとの場所に戻されるのだ。

そして今度は別の客を乗せてまた川を下っていく・・・。日に何度となく繰り返し行われる作業だ。

とまれバスは桜のトンネルをくぐって元の場所に戻る。トンネルは文字通りトンネルだ。

視界が桃色になるほど、桜の花が咲き誇り、その花びらを春風に舞わせている。

ゆっくりとバスは出発点に戻った。これから１２時までは自由行動である。時間はたっぷりある。桜を堪能するのもよし、お土産屋を巡り歩くのもよし・・・。

花より団子の我々は早速土産物屋街に向かった。隙間なく並んでいる店は美味しそうなお饅頭やおそば、そしてお酒が店頭に並んでいる。

驚いたのは手作りに駄菓子が売っていたことだ。ふがしもあれば砂糖飴もある。コンビニが当たり前となってしまったこの時代にこれらは貴重だ。

古きよき時代を思い出す。わしの子供の頃はコンビニなんてものはなく個人経営の商店だったのだ。アルミのタッパの中にむき出しでお菓子がはいっていたのである。

そんな頃を思い出したわしは早速ふがしを購入。１０本入っていて３６０円だった。やっぱ高いねー。でも手作りだからしょうがないか。

各お店をひやかしがてら覗いていく。もちろん昔風のものだけではない。現代的なものも売っている。

現代っ子の姪はアイスクリームを購入。かってしったる味で彼女はご機嫌だ。

そしてわしと父と母はオールド（？）らしく。味噌田楽を購入。味噌がたっぷりとついていて、あげたてのほくほくで１００円だ。お～いしい～。

青空の下、食べるそれは絶品の味だった。こういう軒下で売っている食べ物って家の中で食べてもこれほどおいしくは感じられまい。

そして「冷やしあめ」発見！わしはこれを以前大阪の地下鉄内で購入して飲んだことがある。美味しいのだ。早速姪と購入した。紙コップに入って料金は１００円である。

天気がよくて暑かったせいか喉はからから。ごくりと大きく飲み込む。「美味しい！」・・・と思ったのは一瞬だった。すぐに苦味の入った甘さが口の中に広がった。

そして薬のような味が舌に残った。かなりあとにひく味だ。美味しいと思ったのはほんの一瞬だけで、あとは飲みたくなくなってしまった。味がしつこいのだ。

かなりヘビーな泥甘さである。姪も顔をしかめてる。もう飲みたくないようだ。おかしい・・・大阪で飲んだときは確かに美味しかったのに・・・。

土地が違うと味も変わってくるものなのか？これを飲んで、名前は忘れてしまったが、仏さまにさし上げる飲み物を思い出した。あれを薄くしたような感じだ。

と、汽笛が鳴った。どうやら駅にＳＬが到着したらしい。我々一同は桜舞う花びらを振り払うようにして、そこへ向かう。駅には蒸気機関車が黒煙を上げて停車していた。

フェンスの周囲はそれをカメラにおさめようとする人でごったがえしていた。わしもなんとか写真をとろうとその中を押し入っていく。

その後はバスで通ってきた道を引き返すような形で桜のトンネルの中を散策した。もの凄いほんとにもの凄い桜の花々だ。

これでもかこれでもかというくらい花が咲き開いているのである。

自由時間は終わり、バスに再び乗り込む。次は待ちに待ったごはんだ。つまみ食いをしたとはいえ、歩き回ったのでおなかはぺこぺこだ。

昼食はバイキングのこと。前回行ったナチュラルバイキングが大変美味しかったので期待する。

バスは１時間かかってようやっと目的地に到着した。道のりにしてはそれほど長くはないのだが、道路が非常に混雑していたため時間がかかってしまったのだ。

行きの道のりはスムーズだったけど、今になって混雑し始めたらしい。花見客がどわどわと押し寄せてきていた。

バスは急な坂道を登り、秩父市街を見下ろす高台にある「秩父農園ホテル」に我々を連れて行った。おなかぺこぺこである。

ガイドさんの案内により我々はホテル内に案内され、席に座らせられた。ここは席がすべて窓側に設置されており、客は全員高台からの風景を楽しめるようになっている。

しかしここでも花より団子の我々はそんな風景を尻目に早速トレーを持って、食事を取りにいった。

種類は思ったより少ない。ナチュラルバイキングのときの５分の１程度だ。味は・・・これもいまいちだったなあ。ナチュラルバイキングの方が断然美味しかった。

料理が冷めてしまっていることが原因であろう。料理はやはりできたてが一番美味しいのだ。デザートの数も少ない。ケーキは一種類しかなかった。悲しい・・・。

とはいいつつも３回も席を立ってトレーに料理を乗せにはいったのだけど。飲み物もいくつか用意されていた。コーヒー好きのわしは食後にコーヒーを飲んだ。

しかし最悪。不味いなんてもんじゃない。ぬるくて苦いのだ。飲みきれず結局カップに半分残してしまった。いつもは２杯くらい飲むのに。

なんか今日は飲み物が当たらないなあ。でもお茶は美味しかったらしい。わしは飲まなかったけど。

１時間の昼食を終えた我々は再びバスに乗り込む。今度は清雲寺で桜を見るのだ。バスは来た道を戻る形で坂を下りていった。

ふえ～。ようやっと清雲寺到着。道がすごく込んでてバスがなかなか進まなかったよ。しかも駐車場に停車するまでにももの凄く時間がかかった。

清雲寺はプロのカメラマンがカレンダーに乗せる写真を撮るためのいわば隠れた場所なのだそうだ。だからもともと駐車場も車を多く止めるスペースがないらしい。

それが去年から話題になったため、一気に観光客が増え、自社はもちろん周囲の駐車場はすぐにスペースがなくなってしまうのだそうだ。

我々を乗せたバスはあちこち駐車場を探しまくりようやっと停車できた。運転手さん、ほんとご苦労さま。

そしてここで３０分の自由時間をいただく。我々は早速清雲寺に向かった。駐車場からは歩いて５分ほどの距離だ。

お寺の入口のところからは、またいろんな露店が軒並み連なっていた。我々ツアー客以外にもたくさんの人が来ていて、まるでお祭りのような賑わいだ。

肝心の桜はというと・・・。百聞は一見にしかず。下記写真をとくとご覧あれ。

清雲寺は１４２３年に開祖された、臨済宗建長寺派に属する禅寺である。

境内には「八重」「エドヒガン」「チチブベニ」といった種類のしだれ桜が２０本以上植樹されている。

その中でも天然記念物に指定されているしだれ桜は樹齢６００年といわれている。

午前中見た桜もすごかったけどここも凄い。同じ桜なのにまるで別物に感じる。ここのはまるで雪のようだ。

たっぷりと桜を愛でた後、バスがへ戻る。露店で売られているいろんな串モノを横目にして・・・。ああ、なんておいしそうなんだろう・・・。

しかし文句いいつつもバイキングでたっぷり食事をしてしまったわしの腹はこれ以上何もはいれないところまできていた。

１本２００円のやきたてのおやきを購入したい気持ちをおさえながらここを通り過ぎる・・・。

武甲温泉到着。清雲寺からバスで４０分近くかかった。やはり道が混雑していたせい・・・。帰り大丈夫かな、なんて心配しながら早速温泉場の門をくぐる。

この武甲温泉は秩父・武甲山のふもとに湧き出る温泉で、泉質は単純硫黄泉で冷え性や疲労回復、糖尿病などに効能もあり、美肌の湯としても知られている。

ガイドさんのお話によるとここのお風呂はとても大きいそう。お風呂大好きの我々一家は期待に胸を膨らませて、入浴場へ向かった。

が・・・しかし・・・お風呂は言っていたほど大きくはなかった。その上浴槽が中と外を併せると三つしかないのだ。あとサウナが一つ。

浴槽はどれも大きいとは言えず、また多くの人が入浴していたので、のんびり入浴というわけにはいかなかった。

露天風呂にいたっては周囲を塀で遮られてしまい、景色を楽しむことができない。８０分の入浴時間をもらったのにもかかわらず、長居はできなかった。

景色も見えず、浴槽も少なく狭いとなればさっさと出るのが人間としての自然な行動である。

風呂から上がったのはいいけど、この温泉の周囲には何もないので、バスの出発時間まで時間をもてあましてしまった。

中に宴会場が二部屋ばかりあり、そこで休憩できるようにはなっているのだが、ちょっと騒がしい。

静かで広い空間を好む我々一家は、外に出て涼みながら出発まで待機することにした。

いかな温泉好きでもここはちょっとすすめられないなあ。他の温泉場にはいいところがあるのかもしれないけど。

これで今回のツアーの行程は全て終了。あとは帰途のみである。東京駅到着予定時刻は２０時。混まないといいのだけど。・・・って案の定道路は混雑。

花見帰りの人の車の列でバスは遅々として進まない。途中八王子前のインターチェンジで休憩に入る。時刻は既に１９時をまわっていた。ここで２０分の休憩をもらう。

お風呂に入った後ということと、普通であれば夕食をすませている時間ということもあって、おなかがすいていた。

なんかわしいつもおなかすいてるな。だって基本は花より団子。というわけでお手洗いを済ませた後、食料を求めて店内に入る。

店内には土産物はもちろんのこと、おにぎりやサンドイッチなどが売っていた。わしは手作りの栗おこわのおにぎり２つ入りを購入した。お値段は３００円。ちょっと高めかな？

土産物も充実していて何を買おうか迷ってしまう。悩んだ挙句結局何も買わなかった。バスの中で食べようと「豆もち」五個入りを買っただけだ。これも手作りである。

休憩時間は２０分だが、あっという間に終わってしまった。子供たちは外で売っているたこ焼きとポテトを購入していた。これもほくほくして美味そうである。

手に食料を持ってバスに乗り込んだ我々。すぐにバスは出発した。すっかり腹ペコだったわしは早速おこわおにぎりをほおばる。美味しいっ！

あたたかみがあって適度にねちゃねちゃしていて、適度に甘いのだ。さすが手作り。誰に分け与えることもなく一気に２つペロリと平らげてしまった。

「豆もち」は子供と父に渡した。でもこれは味がなくておいしくないとのこと。うーん、やっぱ当たり外れがあるのかー。

ぱくぱくと何かを食べているのはわしらだけではなかった。バスに乗っている参加者は皆何か口にしている。車内のあちこちで美味しそうな匂いが漂っているのである。

やっぱ皆おなかすいてたのかー。と、ガイドさんが話しはじめる。予定より運行が少し遅れているとの事。東京駅到着が大体２０時３０分になるらしい。やばい！

家族が家に帰るバスに乗る時刻は２０時４０分だというのに。間に合わん！姉は電車で帰ることに決めたようだ。バスは進むバスは進む。混雑は既に終わっていた。

そして見慣れたネオン街が見えてくる。都心に入ったのだ。来た時と同様に一旦池袋駅にて停車する。ここで半分以上の参加者が降りた。

バスの中に残っているのは我々を含む東京駅で下車する参加者だけである。バスは進むバスは進む。またお堀や東京タワーが見えてきた。

ようやっと東京駅到着。２０時２０分だ。急げばバスに間に合う。だが降車地は丸の内側。バスの出発は八重洲口だ。

丸の内側から八重洲口までは同じ東京駅といえどかなりの距離があるには皆さんもご存知だろう。我々は足早に八重洲口に向かった。

千葉の家へ向かうバスはこれ以降出ていないのだ。電車だとバス代の二倍かかってしまう！急げ！急ぐのだ！

齢７７歳の母親をひっぱるような形で（かわいそうだけど仕方ない）我々はバスの停留所へ向かった。ふっ～。バス出発５分前に到着。

わしを残して家族５人はバスに乗り込む。彼らはここからさらに２時間バスにゆられなければならないのだ。

わしは手を振ってバスにいる彼らを見送った。彼らもバスの中から手を振る。

彼らを乗せたバスが行ってしまった後、わしも家に帰るべく日本橋の駅へ足を向けた。

途中の道で桜の樹が通り沿いにずっと並んでその花を咲かせているのを見た。なんて美しいのだろう。

今日一日たくさんの桜を見てきたけど、ここが一番美しいかもしれない。夜風に桜の花びらが舞う。

桜って、夜見たほうがきれいかもね。なんて思いながらそのトンネルの下を今日一日晴天だったことを感謝しながら通っていった。


↑これが渡邉ファミリーだ！えっ、誰も聞いてないって！？	↑温泉場の前で見た光景。土地があるからこそできること。


↑気持ち悪いくらい咲いている・・・。