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ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 1895年制作 個人蔵
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ゆったりと椅子に腰掛けて、静かに瞳を閉じている一人の佳人がいます。 膝元には開かれた本があり、女性はその上で手を組んでいます。 その彼女の前には、これまた見目麗しい少女の姿をした有翼天使が二体膝まづいており、それぞれが楽器を手にして音を奏でています。 そして彼女たちの周囲は野花が咲き乱れ、画面いっぱいに甘やかな芳香を漂わせています。 一見すると天上世界のように見えますが、彼女たちのいる場所の塀の向こうに海があることから、それは違うということがわかります。 海には桟橋と停泊している何艘かの船があります。 果たしてこの眠れる美女は何者なのでしょうか――? 彼女の名はカエキリア。 2〜3世紀頃、生存したキリスト教の殉教者です。 彼女はローマ貴族の娘であり、異教徒の男性と結婚させられたものの、貞節を守り、夫を改宗させました。 そして楽器を奏でて歌いながら神を賛美したことから、音楽家と詩人の守護聖人となりました。 その彼女の眠るこの画は華やかなのにも関らず、静謐さが広がっています。 沈思黙考するかのように眠っているカエキリアの様子から、そこがどんなに居心地の良い場所であるかがわかります。 眠り誘う美しい天使の調べ、匂い立つ芳醇な花々、風光明媚な情景、まさに楽園です。 どうぞゆっくりとお眠りください、守護聖人様…。 そんな天使たちの声が聞こえてきそうな、地上楽園図です。
壁に囲まれし海辺の清らかな町 金箔をきせたオルガンのパイプのかたわら 髪に白き薔薇をからませて眠りしは聖カエキリア 天使がその姿を見守り給う。
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