「ヘロデ王の審査を終えて、処刑場へ向かうマリアムネ」

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

1887年制作 個人

 

 

 

ヘロデ大王は、紀元前37年から4年まで王位に就いた古代イスラエルの王です。

彼はローマ帝国の権威を背景にユダヤに君臨しました。

猜疑心が相当に強い人柄で、身内を含む多くの人間を殺害しています。

彼が非常に愛していた妻、マリアムネもそのうちの一人です。

マリアムネは、王の妹サロメの夫であるヨセポスと姦通したと進言されてしまったのです。

それもサロメによってです。

サロメはマリアムネを嫌悪していたのです。

審査の結果、マリアムネは有罪になり、処刑されることになりました。

本作品はその場面を描いています。

両手首を金の鎖で繋がれたマリアムネは、今、まさに処刑場へ向かおうとしています。

しかしその顔は横を向き、挑戦的な視線を王とサロメに投げています。

王は苦悩からか、その視線を避けるようにして、顔を下に向けています。

王の傍らには、サロメが寄添っており、王を押し留めるかのようにその右手を握っています。

彼女はマリアムネの視線を真っ向から受け、にらみ返しています。

二人の間には見えない火花が散っているかのようです。

凄まじき女同士の戦いです。

それにしてもマリアムネの毅然とした態度はどうでしょうか。

両の拳は固く握りしめていて、屈辱さを表していますが、凛とした佇まいはとても罪人の者とは思えません。

高潔な美しさが全身から滲み出ています。

彼女は全身で自分の無実を証明しているのです。

まるで古代劇の一場面を見ているかのような、実にスペクタルな作品です。

 


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