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「天秤を持つ女」 ヨハネス・フェルメール 1663-64年制作 ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵
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ほの暗い室内の中に一人の女性が佇んでいます。 女性は頭髪を一筋も見せずに白い頭巾を綺麗に被っており、またゆったりとした簡素な衣装を身に着けています。 その姿はまるで修道女のようです。 女性は窓から洩れる明かりを頼りに手にしている天秤を静かに見ています。 その表情は穏やかで慈愛に満ちており、まるで聖母のようです。 実際、女性は我が子を見ているかのような視線を天秤に注いでいます。 その天秤は今均衡が保たれています。 そして女性はそれが揺れないように身体を動かさないようにするためテーブルにそっと左手を置いています。 彼女は一体何を計っているのでしょうか? テーブルの上には蓋の開いた箱があり、そこからこぼれおちるようにして神秘的なきらめきをした真珠の首飾りがあります。 またむきだしになった金貨も何枚か置かれています。 女性はこれらを秤にかけているのでしょうか。 でも天秤の上には何も乗っていません。 彼女の後ろをご覧下さい。 荘厳で重厚な絵画がかかっています。 暗くてはっきりしていませんが、それでもキリスト教の題材の一つ「最後の審判」を描いた作品であることはわかります。 それは世界の終わりのときに、天使が人間の魂を秤にのせて罪の重さをはかっている様子を描いた寓意画です。 その罪の重さによって人間は天国か地獄に行くのです。 女性の頭部で隠れている部分には、本来は大天使ミカエルが魂を計っている姿が描かれています。 それがこの修道女のような女性と重なっています。 女性は何を計ろうとしているのでしょう。 そして慈愛に満ちた聖母のような表情で何を思っているのでしょうか。 おそらく女性はこの絵を見る人の心を計っているのではないでしょうか。 心に迷いが生じたとき、穏やかで温かいまなざしを秤に向けてそれを持つこの女性の姿を見るとなぜか心に静けさが広がります。 善でもなく悪でもなく心の均衡を保つことが人間の美徳ということをこの絵は訴えているような気がします。
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