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「イザベラとバジルの鉢」 ジョン・メリッシュ・ストラッドウィック 1879年制作 モルガンコレクション
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物憂げな表情をして、画面中央で佇んでいる一人の女性がいます。 目にも鮮やかな緋色の衣を纏ったその女性は非常に美貌ですが、その瞳は虚ろです。 心ここにあらず、といった風体です。 女性がいる部屋の中は、その周囲に置かれている調度品から伺いしれるようにとても豪奢です。 ですが、何故か閑散としていて、まるで廃墟のような雰囲気があります。 女性の足元には引き千切られたような萎れた葉が散乱しています。 この女性は一体何者なのでしょうか? そして一体彼女の身に何が起こったというのでしょうか? この女性は、1818年に英国詩人ジョン・キーツが著した詩「イザベラ、あるいはバジルの鉢」のヒロイン、イザベラなのです。 このキーツの詩はラファエル前派の画家たちに好まれた主題でした。 ジョンもそのうちの一人で、本作品を1879年に制作しました。 イザベラの姿が麗しい、美しい画です。 しかし詩の内容は陰惨を極めます。 イザベラにはロレンツォという名の恋人がいました。 しかしロレンツォは貧しく、イザベラの兄たちは妹を金持ちと結婚させるために、彼を殺害してしまいます。 イザベラは嘆き悲しみ、ロレンツォの死体から頭部を切り離し、バジルを植えていた鉢の中に埋めます。 その鉢は見事に花を咲かせますが、兄たちは残忍にも、バジルを根から引き抜いてしまいます。 そこには腐りかけたロレンツォの頭部がありました…。 耳を覆いたくなるような残酷な物語です。 この画には、物語を暗示させる物はあまり描かれていません。 イザベラの背景にある格子窓から見えるバジルの鉢を持った二人の兄が、示唆しているのみです。 ジョンは物語性よりも、悲劇のヒロインの美を描きたかったのでしょう。
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