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「ヴィヴィアン」 フレデリック・サンズ 1863年頃制作 マンチェスター市立美術館所蔵
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キャンバスの中に一人の女性が顔を正面からほんの少し顔をそむけて佇んでいます。 女性は美しく装飾されたタイルの塀の上に両手を重ね合わせるようにして体を預けています。 なんという魅惑的な女性なのでしょう。 一瞬で見た人すべての心を釘付けにしてしまうほどの魅力に溢れかえっています。 女性は黄金色の豪奢な絹の衣服を纏い、肩には傍目にも肌に心地よさそうな白いショールを巻いています。 また首と耳には琥珀色をした大きな粒の飾りをつけています。 そしてその重ね合わせている左手に一輪の野草を持っています。 肌は透明感があってぞっとするほどなまめかしくあります。 画面全体にその魅力がこぼれんばかりに満ち溢れているではありませんか。 何よりも目を奪うのは女性の背後にある孔雀の羽です。 彼女を取り囲むようにしてそれらは咲き誇るように広がっています。 まるで彼女自身が孔雀で相手の目を奪うためにその羽を広げたかのようです。 この恐ろしいほどのまでに甘美的な女性は一体誰なのでしょうか? 実は彼女は「アーサー王伝説」の登場人物である「ヴィヴィアン」なのです。 「アーサー王伝説」は英国に伝わる中世の騎士道物語の一つであり、アーサー王はその主人公です。 彼は、「これを引き抜いた者は王となるだろう」と書かれた台座に刺さっていた剣を見事に引き抜いて、名君に成長していきます。 物語はその過程を描いたもので、この絵画が描かれた頃に多くの画家が主題にしていた作品でもあります。 この「ヴィヴィアン」は王の騎士であるランスロットの育ての親であり、また王の後見人である魔法使いマーリンの愛人でもありました。 彼女は湖の中にある豪奢な館に住んでおり、彼女自身もまた魔女であったのです 物語において彼女は、心優しい女性であったり恐ろしい魔女であったりと非常に変化に富んだ捉えどころのない女性として描写されています。 その多面的な女性である「ヴィヴィアン」をフレデリック・サンズは一枚のキャンバスの中に見事に具現化させました。 確かにこの作品を見ると、可憐な少女のように見えれば、男を惑わす官能的な娼婦にも見えます。 それが魅力の原点となっており、見る人を画面から惹きつけて離さないのです。 サンズはずば抜けたデッサン力を持ち、そして人物の個性を的確に描くことで有名な画家でした。 その才はこの作品にも発揮されています。 この「ヴィヴィアン」のモデルになったのは、「ケオミ」という名の美しいジプシーの少女だったそうです。 だからこの作品にはどことなく異国的な雰囲気が漂っているのでしょう。
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