「愛の影」

フレデリック・サンズ

1867年頃制作 フォーブス・マガジン・ギャラリー所蔵

 

 

 

もの凄い形相をした一人の女性がいます。

きっ、ときつい瞳をして、視線を何処かに向けており、頬をこれ以上ないくらいに引き攣らせています。

そして口を開き、手に持っている花を歯で思い切り喰い千切ろうとしています。

明らかに女性は「何か」に対して、「怒り」を持っています。

それがどの程度か、表情を見ればわかりますね。

恐ろしいとさえ思えるほどの顔つきですが、それにも関らず女性は美しく、また魅力的です。

美しい肌と深い青色の瞳。そして亜麻色の量感のある髪が目を引きます。

髪は画面の半分を覆うほど豊かです。

本作品のタイトルは「愛の影」。

「愛」はすべてが尊く美しいとは限りません。

「愛」すればこそ「憎」んだり、「悲」しんだりするのです。

それらすべてを含んだものが、「愛」なのです。

「愛」の輝きには、必ずこうした負の感情を伴った「影」があります。

「光」の後に「影」がいつもついて回るように。

サンズはこうした負の感情を、女性の表情を描くことで見事に表現しました。

 

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