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「プロセルピナ」 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 1874年制作 テート・ギャラリー所蔵
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憂い顔麗しい美女が一人画面の中で佇んでいます。
波打つ豊かな黒髪、ダークグリーンの瞳、そして筋の通った高い鼻と発色の良い唇、と女性は非常に美貌です。
しかしその表情は硬質的でどこかしら影があります。
そして彼女は何かを思いつめるようにして、手に石榴を持っています。
一体この女性は何者なのでしょうか。
彼女は、そう、プロセルピナ。ギリシャ神話に登場する女神の一神です。
プロセルピナは冥界の王プルートに誘拐されて、はからずも冥府で彼の花嫁となる悲劇の女神です。
地上から姿を消した彼女を追って、その母である大地の女神ケレスは彼女を地上に戻そうとしますが、
プロセルピナは石榴の実を食べてしまったために、一年の半分を冥界で過ごさなければならなくなってしまったのです。
彼女の背景には地上から差し込んでいる光が見えます。彼女はそこから連れ去られてきました。
それはこの冥界からはるか遠くにあります。
ロセッティはこの悲運な女神の像をジェイン・モリスをモデルにして描きました。
モリスはロセッティが愛した女性の一人です。
モリスもロセッティに思いを寄せていましたが、ロセッティにはすでにエリザベスという婚約者がいました。
惹かれあいながらも互いに他の人間と結婚してしまった二人。しかし二人の互いに寄せる思いは結婚後も続きます。
誘拐され心ならずも婚姻を余儀なくされ地獄で暮らすことになったプロセルピナ。
そんな彼女にロセッティは愛するモリスの姿を重ねたのかもしれませんね。
彼女の手にしている石榴は皮が一部分剥かれ、そこから血のような赤い実を覗かせています。
それは彼女の心を表しているようにも思えます。
ロセッティはこの作品を違うヴァージョンで1872年から82年の間に8点描きました。
最後の8点目は彼は死ぬ数日前に完成させています。
彼は最後の時までモリスを思い続けたのでしょう。
モリスへの想いをこめた本作品「プロセルピナ」はロセッティの代表作の一つとなっています。
遥か彼方の光がこの壁に
冷たいなぐさめを届けます――ほんのつかの間だけで
それ以上私の遠い宮殿の扉に射しこむことはありません。
エンナの野の花々を遠く離れ、いちど口にした
この忌まわしい恐ろしい果実が私をここに閉じ込めるなんて。
あの空は遥か遠く、この冥界の薄闇が
私の心をくじくのです。これから続く夜の
かつての昼と何とかけ離れていることでしょう。
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