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「黄金の門」 ヴァレンタイン・キャメロン・プリンセプ 1882年制作 マンチェスター市立美術館所蔵
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ずっしりとして重たそうな扉の前に一人の女性が体をもたれかけさせながら佇んでいます。 扉は光輝く黄金色をしており、境目が何処かわからないほどに隙間なく閉じられてしまっています。 美しいけれども冷たそうで硬質的なそれは完全に女性を拒んでいます。 女性は黄金色の扉に負けないほど鮮やかな橙色のサリーのような衣装をまとっていますが、その表情は暗く沈んでいます。 また彼女の足元には小さなランプがこれもまた途方にくれたようにして転がっています。 彼女は一体何者なのでしょうか? 実は彼女は「愚かな乙女」の一人なのです。 結婚式に出席するために出かけたのに、灯火に注ぐ油を持っていくのを忘れてしまった「愚かな乙女」なのです。 全部で10人の乙女が出かけましたが、そのうちの5人が油を持って行くのを忘れてしまいました。 深夜に花婿が到着し、5人の乙女は扉の中の婚礼の席に入れましたが、油を忘れた5人は門の外に取り残されてしまうのです。 これは「マタイの福音書」に記載されている一節の「賢い乙女と愚かな乙女」というイエス・キリストの譬話です。 これはその場面を抽象的に描いた作品です。 黄金の扉の向こうには幸福の光に包まれた花婿たちがいます。 今頃は華やかで楽しい宴が催されていることでしょう。 準備を怠った愚か者はそれに参加するどころかそれを目にすることすらできないのです。 この譬話は男であれ女であれ、主がいつ来られてもいいように準備し、覚悟していなければならないという教訓です。 常日頃からの心掛けが人生の明暗を分けるということを暗示させています。 誰もが行きたいと願う黄金の扉の向こうの世界。 それはきっとこの扉より光り輝いているに違いありません。 「だから目を覚ましていなさい。あなたたちは人の子イエスが来られる日や時を知らないのだから」
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