「パヴォニア」

フレデリック・レイトン

1858年-59年制作 個人

 

 

 

 

画面の中から一人の女性が、上半身のみの姿で左肩越しに振り向いて視線を我々に向けています。

なんという美しい女性なのでしょうか。見た瞬間、驚きのあまり立ちすくんでしまうほどです。

美しいだけではなく非常に魅惑的です。

この堂々とした表情をご覧下さい。

自分の美しさを充分に自覚しながら勝ち誇ったかのように微笑しています。

まるで孔雀です。

実際女性の頭の後ろにはその羽の扇が広がっています。

それはあたかも彼女自身の羽を広げているように見えます。

この美しく魅力に溢れた女性は一体誰なのでしょうか。

実は彼女はローマ人のモデルの「アンナ・リージ」なのです。

フレデリック・レイトンはアンナの強烈な個性と美しさに惹かれ、彼女の絵を何枚も描きました。

この作品はそのうちの一つです。

アンナの美しさには誰もが驚嘆したと言われています。

彼女のその姿形についてはこう語られています。

「瀬はすらりと高く、首の長い均整のとれた体つきで、髪は濡れ羽色、肌は艶やかなオリーヴ色をしていた。

さらに彼女の瞳はことのほか麗しく、深く窪んだその形はアーモンドのようであり、眉はくっきりとしていた」

その通りレイトンは彼女の美貌を寸分違わず描いています。

すっと通った鼻筋の線も、瞳の下の物憂げなセピア色も、見事に描ききっています。

まるで彼女の美しさを少しでも漏らすまいとしたかのような描写です。

この絵を見た人は誰もみな彼女の虜になってしまうに違いありません。

巨匠レイトンは類まれなアンナの美しさを一枚のキャンバスの中に永遠に閉じ込めたのです。

 


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