「グランド・オダリスク」

ジャン=オーギュスト=ドミニク=アングル

1814年制作 ルーブル美術館所蔵

 

 

 

 

ここにあなたを見つめる一人の裸婦がいます。

なんという魅惑的な女性なのでしょうか。

匂いたつような美しさです。

この女性は一体何者なのでしょうか?

彼女はオダリスク、そう、後宮の女なのです。

彼女は豪奢な絹の寝具の上でくつろぎ、こちらを射るような視線で見つめ、画面いっぱいにその豊潤な肉体を見せつけています。

頭にまいたターバン以外には一糸もまとっていません。最も美しいのは背中から頚椎部分にかけての流曲線です。

非常にしなやかでなめらかで実に官能的ではりませんか。

その肉体を覆うのは輝くような真珠色をした肌。また頬と唇は薔薇色をしています。

心持ち乳房を隠している腕から伸びた手はすらりとしていて、その先で幾重にも重ねられた孔雀の羽を握り甘美さを漂わせています。

体こそあちら側にむけて猫科の動物のようにくつろがせていますが、顔はこちら側をむけて挑むような瞳をしています。

そう、彼女は誘惑しているのです。

今、まさにその体をこちら側にむかせて、その芳香なまめかしい腕を首に絡めてきそうです。

寝物語の幕開けを連想させる、アングルの不朽の名作です。

 


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