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「黒衣のアルバ公爵夫人」 フランシス・デ・ゴヤ 1797年制作 アメリカ・ヒスパニック協会所蔵
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これは第13代アルバ公爵夫人カィエターナを描いた作品です。 公爵夫人は当時のマドリードの社交界においてひときわ目立つ存在でした。 「美しさ、人望、人を惹きつける魅力、財力、家柄、すべてに抜き出ている」と語られ、「スペインの新しきヴィーナス」と賛美されたほどの美貌の持ち主です。 そしてこの絵の作者であるゴヤと親密な関係にあり、当時センセーションを巻き起こした彼の名画「裸のマハ」のモデルではないかと推測されました。 この絵の描かれた5年後の1802年に夫人は亡くなりますが、その噂とあいまって彼女の身辺は謎めいていたため、毒殺されたという説があります。
この絵における夫人は立ち姿の全身像で描かれ、左の中指と人差し指に銀の指輪をはめ、そして地面を指差しています。 また、左の中指の指輪は「ALBA」、そして人差し指の指輪には「GOYA」という文字が刻まれています。 そして彼女が指し示している地面には「SOLO GOYA」という文字が書かれています。 それは「ゴヤだけを!」という意味です。 こうしたことから夫人とゴヤは密接な関係以上、つまり愛人関係にあったということがわかります。 しかしそれにしてもこの夫人の顔貌は一体どうしたことでしょう。 タイトル通り夫人は黒衣をまとって屹立していますが、その顔は平面的で表情がありません。 「美神」と讃えられるような容貌とはかけはなれており、のっぺりとしていて小動物を連想させるような滑稽顔です。 ゴヤには彼女の美しさを表現できるような技術がなかったのでしょうか。 いいえ、そんなことはありません。 彼はスペイン最大の画家の一人とされ、当時から名声を確立していた宮廷画家です。 ですから当然のごとく彼は描写や写実には非凡な才能を持っています。 それにも関わらず、彼は自分の愛人でもあった女性を風刺的に描きました。 「ゴヤだけを!」という文字とともに。 さすがは今日にいたって尚波紋を投げている「裸のマハ」の作者ですね。 実に一筋縄ではいかない画家です。
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