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「靴」 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年制作 メトロポリタン美術館所蔵
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キャンバスの中に一足の靴が描かれています。 それは紐がだらしなくほどけおり、今脱ぎ捨てられたかのようにそこにあります。 また靴自身は使い古してくたくたになっており、あちこち汚れています。 決して美しい靴=作品とはいえないのに、何故か魅きつけられてしまい、画面から目が離せなくなってしまいます。 それどころか描かれているこの靴に対して愛しさまで募ってくるから不思議ではありませんか。 左と右の靴は一組の夫婦のようにして互いに寄り添うようにして重ねあっています。 まるで靴自体が人格を持っているかのようです。 この靴は実はこの絵を描いたゴッホ自身のものなのです。 この靴とともに彼はさまざまな地を歩いたのでしょう。 くたくたになっている靴の姿がそれを証明しています。 そしてすでに靴は彼の一部になっているのです。 いや彼自身といってもよいのかもしれません。 彼は自分の靴を描くことで自分自身を描いたのです。 この靴を履いてあるくゴッホの姿が自然と浮かんではきませんか? ゴッホは1887年にパリに住んでいた間に5枚の靴の絵を制作しています。 しかしこの作品だけはアルルで描きました。 そしてまたゴッホはこの絵をアルルの自分の家の部屋に飾りました。 それについてゴッホとアルルで共同生活をしていたゴーギャンは次のように語っています。 「私の黄色い部屋に小さな静物画があった。・・・一足の大きな、使い古した形のくずれた靴、ヴィンセントの靴である。 この靴が新しかったとき、ある天気の良い朝、彼はこれをはいて、オランダからベルギーまでの徒歩旅行に旅立ったのである」
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