「アイリス

フィンセント・ファン・ゴッホ

1889年制作 ポール・ゲッティ美術館所蔵

 

 

 

 

ゴーギャンとの共同生活の破綻によって深い心の傷を負ったゴッホは、大好きなアルルの地を離れ、サン=レミの精神病院で療養することになりました。

とはいっても、彼には絵を描く自由は許されており、自室の他に制作室まで与えられます。

ゴッホはここでたくさんの絵を描きました。後に彼の傑作とされる作品群はすべてこの時期に描かれたものです。

彼は病院の職員や建物、中庭、そしてそこから見える風景を描きました。

中庭に咲く花の絵もたくさん描きましたが、特に彼が好んだのはアイリスでした。

色鮮やかな紫色のこの花は、深い病に悩まされる彼の目にはとても生き生きと写ったのでしょう。

アイリスは彼にとって安らぎの花となりました。

しかしそれでもゴッホの病は癒えることはありませんでした。彼の見えない傷はあまりにも深く大きかったのです。

癒えるどころか彼の病はますます酷くなっていきました。

耐え切れなくなった彼はついにサン=レミを離れることになります。

この作品を描いてから1年後のことでした。


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