「民衆を導く自由の女神」 ウジェーヌ・ドラクロワ 1830年制作 ルーヴル美術館所蔵
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まずはこの大きな絵の中心にいる女神をご覧ください。 彼女は乳房も露にフランスの国旗を掲げて、力強い足で戦死者の屍を踏み越えながら、民衆を先導しています。 左手に持つのは民らと同じ武器の銃。フランス版アテナ神といったところでしょうか。 頭には鎧兜ではなく、芸術大国フランスの象徴でもあるベレー帽を被っています。 これがフランスの女神です。 濛々と立ち込める土煙の中、赤・白・青のトリコロールの旗が鮮やかに目を引き、またそれを掲げる彼女の腕はあまりにも力強く、 民衆らに勝利を約束しているかのようです。 女神が目指すその先にあるのは民衆が夢見る自由への道。 手に武器を持って彼女の後に続く民衆たちの頑健な表情からは、戦うことの恐れを一切感じさせません。 ここにいるのは神話世界に登場する美しく高潔な天上世界に住まう女神ではなく、戦乱の中に身を堕とし、血しぶきと泥にまみれながら 共に戦うジャンヌ=ダルクのような存在です。 フランス革命時代、民衆たちが望んだ女神がここに降臨しました。 「民衆の歌」がいまにも聞こえてきそうな、大国フランスの誇る名作です。
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