「真珠の女」

ジャン・バティスト・カミーユ・コロー

1868-70年制作 ルーブル美術館所蔵

 

 

 

  

バルビゾン派の巨匠カミーユ・コローは詩情溢れる森や湖の風景画を多く描いたことで知られていますが、実は人物画多く描いています。

その中でも彼が晩年に描いた作品「真珠の女」は人物画の代表作とされています。

この作品はダ・ヴィンチの名作「モナ・リザ」を意識して描かれました。

そのため構図がそれとほぼ同じになっています。

セピア色に塗りつぶされた画面の中に、佇む一人の女性。

上半身のみ描かれているこの女性は「モナ・リザ」と同様に胸のところで腕を組み、やや右向き下限にこちらを意味ありげに見つめています。

この絵を見た瞬間誰もがあの世界の名画を連想するでしょう。

「モナ・リザ」と異なっている一番の点は、この女性が木の葉の冠を被っていることです。

これがこの作品の由来ともなっています。

この木の葉が真珠に見えたことからタイトルが「真珠の女」となったのです。

そういえば額にぽつりと一つだけかかっている木の葉が一粒の真珠に見えますね。

何もない背景に佇む女性の肖像は顔や身体の線がくっきりとしていて、まるで生きた女性が本当にそこに存在しているかのようです。

写実主義画家でもあったコローは明確で完璧な描写力をこの作品にも発揮しました。

また彼特有の穏やかで優しげな画風が画面全体に広がっています。

ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」は芸術的で美しいけれど、神聖かつ崇高で近寄りがたく、畏怖さえいだきます。

しかしコローの「真珠の女」は親近感があり、見ているとほっとした気分になります。

女性が生まれながらにして持つ母性や慈愛がそこはかとなく感じられます。

これがコローの「モナ・リザ」なのです。

ダ・ヴィンチのモデルは未だ謎のままですが、この作品のモデルとなった女性は商家の16歳の娘で非常に美しかったと言われています。

生涯を通して独身だったコローは、彼女の中に自分の「モナ・リザ」を見たのかもしれませんね。

 

 


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