「ブルー・エンジェル」

マルク・シャガール

1938年制作 個人蔵

 

 

 

 

この画面全体に塗りこめられた美しい青色をご覧ください。なんという綺麗な色なのでしょうか。

空色、紺色、アクアブルー、コバルトブルー、いいえ、どの青色でもありません。

これは、シャガールが生み出した夢の色なのです。

見ていると、自分もこの色に溶けていってしまいそうになりませんか。

その色彩の中に浮遊するようにいるのは、一人の白い羽の生えた少女。

少女のその大きい羽は、何かの切っ先のように鋭く、天に向かって伸びています。

背景色のブルーが、その白さを際立たせているので、まぶしいほどです。

少女は可憐な洋服をまとって、花瓶に生けられている等身大の花を抱えるようなポーズをとって、それを見つめています。

その花瓶からあふれ出るようにして活けられている色彩豊かな花々は、非常に生き生きとして、少女と同じように見入ってしまいます。

また、天使の周りには青の色彩に溶け込んで、人物や動物が描かれています。

まるで、水底にある世界を覗き見しているかのようです。

空を飛んでいる人や月を描いている人、さかさまになっている家があるかと思えば魚や鶏もいます。

一見すると無秩序な世界なのですが、違和感は全く感じず、それどころか調和がとれているようにさえ思えます。

画面の左端にははしごのようなものが見えます。少女はこのはしごを使って地上に降りてきたのでしょうか。

もしかすると、この美しい夢のような不思議な空間は、天使が見た地上世界なのかもしれませんね。

 


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