「ヴィーナスの誕生」
アレクサンドル・カバネル
1863年制作 オルセー美術館所蔵
高らかに鳴り響くファンファーレが聞こえてきませんか？
空中に舞う５体の愛らしいキューピットらが、新たなる女神の誕生を祝福しています。
この画面いっぱいに艶かしいポーズで横たわっている女神は何者なのでしょうか。
彼女は美を司る者−−そう、ヴィーナスです。
泡立つ白波の海面上で、一糸まとわぬ裸体を堂々見せつけ、誕生時からその美をわれわれに見せつけています。
乳房や性器をも大胆に見せつけたポーズを取っていますが、少しも嫌らしくありません。
それどころか、高貴な品格と気高さ、そして崇高さを感じることができます。
彼女のこの肉体をご覧ください。
均整の取れた長い手足、なだらかで美しい肢曲線、弾力のある豊かな乳房や腰、真珠色に輝くアラバスターのようななめらかな肌、
海草を彷彿させる波打つ黄金色の長い髪。
このような完璧なフォルムを見たことがあるでしょうか。
今まさに女神は目覚めようとしています。全ての美の上に君臨する最高美神の降臨です。
ここから女神は誇り高く立ち上がり、瞳を開いて、この世を見渡すのでしょう。
その世界を見渡す瞳は一体何色をしているのでしょうか。