「木に縛られた王女」

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ

1866年制作 個人蔵

 

 

 

 

白装束を纏った女性が前屈みの姿勢で佇んでいます。

ぱっと見ると女性は、木を抱いているように見えますね。

でもよく見ると、それは違うということがわかります。

彼女は木を抱いているのではなく、縛り付けられているのです。

ゆったりとした装束に隠れて見えませんが、女性の手には鎖がかけられています。

女性が決して逃げられないように、しっかりと木に括らせて・・・。

一体この女性の身に何が起こったのでしょうか。そしてこの女性は何者なのでしょうか。

実はこの女性は「聖ゲオルギウス伝説」に登場する人物の一人で、村を治める王の娘なのです。

そして王女はいま、村を荒らす悪竜に生贄として身を捧げようとしているのです。

王女の遠方には、彼女を木に縛り付けた侍女たちが何の感慨もなく村へ帰っていく様子が描かれています。

王女はそんな彼女たちに対する反抗やこれから起こる恐るべき事態に対しての恐怖などみじんも見せずにただ静かに目を閉じています。

そんな王女の姿は、まるで祈りを捧げる敬虔な修道女のように見えます。

いえ、まさしくその通りなのです。

王女は自分の運命を自覚し、受け入れているのです。

全ては神が自分に課した宿命として――。

 

ラファエル前派の巨匠であるバーン=ジョーンズがこの作品を描いたのは、19世紀後半初期のことです。

それは女性が社会進出をはじめた時代でした。

「従順」こそが女性の本来のあるべき姿、そして役割だというキリスト教的な考えを持っていた彼は、これにに対し不安を覚えます。

彼は自分の思想を反映させた理想の女性像である「運命を享受」する王女の姿を描くことで、自立をはじめた近代女性に抵抗し、警鐘を促したのです。

 

 


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