ART INVITATION Part.2
燃え立つ六月 
フレデリック・レイトン
 
フレデリック・レイトンは好きな画家の一人である。
彼の作品を初めて見たのがいつで何の作品であったかは記憶は定かではない。
ただ2000年に安田火災東郷青児美術館で開催された「ラファエル前派展」に展示された「
パヴォニア」という作品が強く印象に残った。
タイトルの意が「孔雀のような」という、絶世の美女アンナ・リージをモデルにした作品である。
孔雀の羽根を背にこちら側をふりむいているアンナの上半身姿が描かれた画だ。
画を見た瞬間、アンナの匂い立つような迫力ある美しさに気圧された。
画の中のアンナは「どう?私って美しいでしょ?」と勝ち誇るかのように語っており、それに魅せられて、その場から動けなくなった。
そしてこのような美しい絵を描く画家はどのような人物なのかと強い興味を持ち、他の作品も見たくなった。
早速フレデリック・レイトンの画集を手にしたのは書くまでもない。
そして見つけた「燃え立つ6月」。
彼の代表作である。
その絵を見た瞬間、空いた口が塞がらなくなった。
燃え盛る太陽がそこにあったのだ。
書から強烈な太陽の熱と光が飛び出し、全身を貫いた。
画は眩しく輝いていた。
太陽が渦巻いているのだ。
実際は一人の女性が、横たわって眠っている姿が描かれているのであるが、鮮やかな橙色の衣装をまとっているため、そのように連想するのだ。
実にエネルギッシュでパワフルな「生」に満ち溢れた画である。
まさしく太陽そのもの。
女性は心地良さそうに寝ており、その対比がまた絵の魅力となっている。
見たい。この絵を実際に見てみたい。
体の底辺から激しい思いが沸き上がってきた。
所蔵先はポンセ美術館。
聞きなれない美術館だった。
その所在地を調べると、なんとプエルトリコにある美術館だった。
欧州の画家の絵画が何故その美術館に?
レイトンは19世紀に英国画壇に君臨した新古典主義(またはラファエル前派)に属される画家である。
一世を風靡したこの派は、新たに台頭した派にその座を奪われる。
レイトンも例外ではなかった。
代表作「燃え立つ6月」は時代の波に押し流されて、流れに流れて米国に属するプエルトリコの美術館に辿り着いたのだ。
それが現在に続いている。
プエルトリコはメキシコの東、南米大陸の北に位置するカリブ海に浮かぶ島である。
馴染みのない地だ。
欧州で描かれた画であるが、熱帯の地に似合いかもしれない。
行ってみようか。
未知の国プエルトリコへ。

*「燃え立つ6月」 フレデリック・レイトン 1895年作 ポンセ美術館所蔵

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