ドッグヴィル  ・・・こんな村、この地上から消えてしまえばいいのよ・・・!!

2003年米国作

監督:ラース・フォン・トリア

出演:二コール・キッドマン/ポール・ベタニー

 

【あらすじ】

ロッキー山脈のふもとにある総数23人ほどしかいない閉塞的な村「ドッグ・ウィル」。

そこにある日一人の来訪者が現れた。

彼女の名はグレース。アラバスターのような肌をした金髪の美女である。彼女は誰かから追われていた。

事情を詳しく話さずに、自分をここにかくまってほしいと村人たちに懇願するグレース。

村人たちは、彼女が村の各家の手伝いをすることを条件として、この美しき逃亡者を村に迎え入れることにした。

そして彼女は真摯に村人達の家の手伝いを始める。

彼女のひたむきな働きは、村の人々たちの心を打ち解けさせていった。

やがて彼女は来訪者でなく、村人の一員として扱われるようになった。

しかし彼女は若く美しい女性。自然、村の男性たちが彼女に浅ましい欲望を抱くようになっていく。

そんなある日、彼女の追手らしき一団が村にやってきた。それに怯えるグレース。

彼女に懸想する村人の一人チャックは、ここに匿っていることを黙っていてほしければ、自分のいうことを聞けと彼女に迫る。

抗えない彼女は、チャックの欲望の餌食となってしまう。

それが村の崩壊の始まりだった・・・。

 

【翡翠の勝手に作品解説】

3時間の長いドラマにもかかわらず、ストーリーが章ごとにまとめられているため(全部で9章からなる)、少しも長く感じられない。

舞台設定は珍妙で、床に白線が引いてあるだけで背景が全くない。

だがそれにもかかわらず、ストーリーがすすむごとに村の中の景色が浮かんでくるから不思議だ。

そして映画にはかかすことのできないバックグラウンドの音楽も一切使われていない。

語り手が淡々と、本当に淡々とストーリーをつづっていくのみだ。それはまるで人の心を読んでいるかのようなかたり草である。

そのため登場人物たちの心理描写が実によくわかる。

これほどまでに見事に登場人物の心理描写を表現している映画は他にはないであろう。

この映画のストーリーの根底にあるのは、「人間の心の醜さ」である。人間なら誰でも持つ心の「醜悪さ」。

それがどういった状況で、どのようにして浮かび上がってくるのか、実に如才に表現している。

それは現代の社会問題である「いじめ」に相当しているといえよう。

村に突然出現した美しき逃亡者グレースは、自分たちとは「違うモノ」なのである。

人間は、いや動物は自分達とは「違うモノ」に対して、あからさまで強烈な敵意を持つ。かつ決して自分と「同じモノ」としてはみなさない。

彼女が村人らに受け入れられたのは、彼女の真摯な態度によるものではなく、彼女が「美しきモノ」であったからに他ならない。

人は誰でも「美しきモノ」に対し、畏怖の念を抱き、かつ手に入れたいと望むのだ。

もし逃亡者が男であったり、老人であったり、美しいとはいえない女性であったりすれば、村人らはうけいれることをしなかったであろう。

「美しきモノ」であるグレースに対し、村人らは自分らの上にいる存在として接する。

だが、やがて力関係で完全に下の存在の「モノ」だということ認識すると、彼女を自分達の支配下に置いた存在として扱うようになるのである。

つまり「こいつにはなにをしてもいい」と思うようになるのである。これが古今東西存在する「いじめ」の起因である。

たとえていうならば、彼女は転校生。しかも普通の転校生ではない。

富裕層の学校に通う生徒がそこに嫌気がさし、労働者階級の学校に自ら望んでやってきたという背景を持つとびきり美しい転校生なのである。

望んでも決して届かない世界の「モノ」が突然自分達の世界にやってきた。戸惑いはあるものの、これを喜ばないわけがない。

だが転校生は所詮転校生。卒業するまでそれはつきまとう。決してそこの学校の一員としては見なされないのだ。

この村も同様。当初グレースに親切に接していた態度は全くなくなる。

村人たちは彼女が村から逃げられないように首かせをつけ、奴隷のように扱ってこづきまわすようになるのである。

そして夜毎、村の男性たちのなぐさみものにまでされてしまう・・・。人間の醜悪さの図もここに極まれり、である。

そんなグレースにとって地獄のような日々が続いたある日、彼女の追手だと思っていた一団が再び村にやってきた。

その一団の正体はなんと恐るべきギャング団だった。そしてその首領は死んだと言っていた彼女の実の父親であったのだ。

グレースは権力を使ってか弱き人々に非道な仕打ちをする父親に辟易し、彼のもとから逃げ出したのである。

首かせをつけて村の中にいる彼女を父親は発見。彼女は一団の手によって村人の魔の手救われる。

権力と暴力を忌み嫌って逃亡したグレース。その彼女がその頂点にいる父と再会。

そして彼女は彼に向かって言う。

「こんな村、この地上から消えてしまえばいいのよ」

 

 

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