エリン・ブロッコビッチ
2000年米国作
監督:スティーブン・ソダーパーグ
出演:ジュリア・ロバーツ/アルバート・フィニー
【あらすじ】
エリン・ブロッコビッチは、職なし・学なし・離婚暦2回の3人の子供を持つシングルマザー。
物語はそんな彼女が、ある日交通事故にあうことから始まる。
事故で大怪我をした彼女は、損害金取得のため裁判を起こす。だが、確実であったはずの訴訟は敗訴となってしまう。
それは、彼女のはすっぱな口調が裁判官の心証を悪くさせてしまったからだ。非は完全に相手側にあったのに・・・。
損害金を手にすることが出来無かったばかりか、職は見つからず借金はかさむばかり。一家の生活は困窮に差し迫ってしまう。
このままでは一家心中しかない、というところまで追い詰められた。だが、彼女は奮起してある行動を起こす。
交通事故の裁判を担当した弁護士事務所に強引におしかけ、勝手に自分で仕事をし始めるのである。
突然現れて仕事を始めたエリンにエド(エリンを担当した弁護士)と事務所の人間は迷惑顔。しかし彼女はひかなかった。
エドは仕方なく、彼女に書類整理の仕事を与える。エリンはそこで書類整理の仕事を毎日こなすことになった。
そしてある日仕事中に不振な記録を発見する。それは米国最大企業の不動産記録だった。そこに医療記録が記載してあったのだ。
何故医療記録があるかと周囲の人間に尋ねても誰もそれに無関心。そこでエリンは独自で調査を始める。
そして彼女は知るのだ。米国大企業が記録をごまかして、有害な毒物を町に廃棄しているという衝撃の真実を。
エリンはバドと町の人々に自分が独自で行った調査記録を見せ、企業と裁判で闘うことを訴える。
しかし相手は米国最大企業。エドも町の住民を無理だといって彼女の声に耳を傾けない。だが、エリンはあきらめなかった。
毎日彼らに訴訟を呼びかけた。そんな彼女の真摯な態度に周囲の人間は心を動かされ、彼らはついに闘うことを決意する。
そして訴訟は見事勝訴。彼女は米国最大企業から米国史上最大の和解金を勝ち取ったのである。
【翡翠の勝手に作品解説】
2000年米国で制作された大スター・ジュリア・ロバーツ主演のノンフィクション映画である。
ジュリア・ロバーツはこの作品で映画女優として最高の栄誉であるアカデミー主演女優賞を受賞の他、ゴールデングローブ賞女優賞、
英国アカデミー賞女優賞も獲得した。
映画タイトルである「エリン・ブロッコビッチ」は実在の人物で、映画の中にも登場している(ウエイトレス役)。
この映画を見た世の女性は、彼女から大きな勇気と力をもらったことだろう。
人間死ぬ気になってやればなんでもできるもんだ。そんなことを思わせる一人の女性のサクセスストーリーである。
近年これと似た実際のストーリー「幸せのちから」という作品がウィル・スミス主演で公開されヒットを飛ばした。
わしはその作品も見たが、感想はいまいち。この「エリン・ブロッコビッチ」の方が断然面白いと思う。
(ファンの方すみませんねえ。でも個人の好みの問題なのであしからず)
両作品の内容はほとんど一緒。貧乏のどん底からはいあがって一躍大金持ちになるという、しかも双方との実在の人物のお話しである。
主人公が男性だからだろうか。「幸せ・・・」の方は共感がもてず、また真剣みが伝わってこなかった。
それに悲惨さでは「エリン」の方がはるかに上である。「幸せ」も「エリン」も二人とも連れ合いに捨てられた子持ちであるが、スミスさんちは男の子
1人(しかも小学生くらい)に対し、ジュリアさんちは3人の小さなお子さんがいるのだ。しかもそのうちの一人はまだ乳飲み子である。
これでは仕事に行きたくともいけない。スミスさんは子供も大きいし、その気になればいくらでも仕事は探せる。
子供から離れられないジュリアさんは、仕事も探せないのだ。残金は16ドルしかなく、子供たちは食べ盛り。
家の台所で一人ヨーグルトをすするようにして食べてる姿には涙がこぼれた。
あげく彼女は交通事故に見舞われ、さらに借金はかさんでいく・・・。
先は絶望しかないとおもいきや、彼女は持ち前の気丈さで人生を切り開いていく。
交通事故で訴訟を依頼した弁護士の事務所に子連れで押しかけて、勝手に仕事を始めてしまうのだ。
もちろん弁護士もそこで働く人間たちも大迷惑。しかし彼女はひかない。自分で仕事をせっせっと見つけていくのだ。
そこで彼女は運命の転機となるある案件の書類を発見する。それは誰もが知る米国大手企業の不動産記録だった。
そこに医療記録が記載してあり、不振に思った彼女は独自で調査を始めるのだ。もちろん3人の子供を引き連れて・・・。
この彼女の調査の仕方がすごい。彼女は弁護士の資格を取得しているわけでもなく、また法学部出身というわけでもない。
つまりはどうしろうとなわけだ。セクシーダイナマイトなバディをおもいきり露出して、文字通り体当たりでの調査を行っていく。
この辺りは実際映画でみてほしい。ジュリア・ロバーツがエリンそのものではないかと思うほどの好演ぶりだ。
彼女の調査には苦難がつきまとったが、やがてそれも功を奏して真実が明るみにでる。
企業が公害となる毒物を町に流し込んでいるという事実が発覚したのである。
彼女はエド(事務所の弁護士)に報告し、企業に対し訴訟を起こすことを提案する。
しかし相手は280億ドルの大企業。勝ち目はないと彼は彼女の意見を回避しようとする。けれどエリンはひかない。
企業のせいで環境汚染された町の住民一人一人に呼びかけ、闘って訴訟金を取るのだと訴える。
最初は彼女の言葉に耳を貸さなかった彼らも、彼女の恐ろしいほどの真剣さに心を開いていく。
そしてついには住民全員が闘うことを決意するのだ。しぶしぶだったエドもよやっと腰をあげる。だがそう簡単にことはうまくはこばない。
相手はなにせ米国最大の企業。悪いこともなんのその。エリンの身に危険が及ぶようになる。
見かねた彼女の心優しい恋人は、仕事はやめてくれと哀願する。また自分が働くから、君は働かなくてもいいんだとまでいう。
多くの女性はこう思うだろう。「その通り!命あっての仕事。あんたには3人の子供もいる。今やめたって誰もせめないからもうやめなさい」と。
だがエリンはゆずらなかった。身の危険が迫っても、恋人が自分の前から去っていっても、子供たちから非難されても。
それは何故か?お金のためじゃない。意地でもない。彼女はいう。「生まれて初めて皆が私の言葉に耳を傾けてくれたのよ」と。
これが今のエリンを作り上げた彼女の骨格といってもいいだろう。
離婚暦2回、学なし・職なし、3人の子持ちで、はすっぱな口調と服装をするエリンは誰からも一人の人間として見られたことはなかった。
そんな彼女に多くの人々は信頼をよせたのだ。だからやめられない。それは自分を裏切ることになるからだ。
そうして彼女は最後の最後まで自分の信念を貫く。物語の結末はもちろん大団円。
観客はだれしも「やった!」と自分のことのように喜んだであろう。
しかし笑ってしまうのは最後までエリンが自分のスタイルを変えなかったことだ。露出度の服は替えないし、すぐ切れる。
終幕を見て失笑した人間も多いのではないだろうか?
米国最大企業から過去最大の訴訟金を勝ち取ったエリンは今尚そのスタイルを変えず健在で、多くの人々から訴訟の依頼を受けているという。
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