LOST

「24」「プリズンブレイク」と並んで人気を誇る海外ドラマ。

２００４年から放映が開始され、２００９年現在ではＤＶＤはシーズン4までリリースされている。

鬼才J.J.エイブラムスがその持てる能力をすべて注ぎこみ、そしてそれが発揮された見事な出来栄えの作品である（と、わしは思っている）。

米国のほとんどの海外ドラマは、人気があれば続編を次々創作して放映していくが、逆に人気がなければ物語途中であろうと平気で放映を

終わらせてしまう風潮にある。

が、本作品はすでにシリーズは６で完結する予定となっており、そしてその放映は２０１１年までと決定しているため、安心して（？）次のシリーズを

続けて見ることができる。

ストーリーはタイトルから想像できるように、無人島サバイバルストーリーである。

オーストラリア・シドニー発ロス行きの飛行機が航行中にエンジントラブルを起こし、上空で機体がバラバラになり、乗員乗客らがそこから投げ出され、

無人島に漂着するところから物語は始まる。生存者は４８名（これは物語冒頭においての生存人数）。

果たして彼らは無事にこの島から脱出できるのだろうか？

物語の冒頭部分からだけだと、なんだ「キャストアウェイ」やちょっと昔になるけど「ロビンソンクルーソー」と似たような話ではないか、といった先入観を

持ってしまうかもしれない。

ところが。ところが、なのだ。このドラマはそう単純なストーリーではないのだ。

単なるサバイバルストーリーではないのだ。

それは彼らが着陸した島は普通の島ではなかったからだ。

普通の島ではないからといって、「ダイノトピア」や「ラストキングダム」のようなファンタジックな異世界とは違う。

が、ある意味、異世界なのだ。それは常識では計り知れない、そして言葉では表すことのできない、現代の人知を超えた不可思議な世界なのである。

どこが不可思議なのかというと・・・。それは数え切れないほど事象はあるのだが、とりあえず代表的なものだけとり上げてみる。

まず南の島のはずなのに何故か白熊がいるのである。

また得体のしれない化け物がいて人を襲ったりもしてくる。ちなみにこの化け物は黒く長い煙状の形容をしており、神出鬼没である。

また無人島かと思いきや、しっかり先住民もいる。しかもそれは未開の地の原住民ではない。

一応（？）不時着した生存者たちと同じ文明人のようなのである。それなのに何故か原住民のような格好をしていたりするからまた？なのだ。

そしてあまつさえ、生存者たちの中にスパイとして潜入し、自分たちのテリトリーへと生存者たちを次々拉致していくのだ。その意図もまた不明なのである。

この島の不可思議さはこれだけではない。ストーリーが続くにつれ、「えっ！？」と思うような事象がまだまだたくさん出てくるのだ。

機体から投げ出された生存者たちは、当初はこの島がそんな恐ろしいところだと（当たり前か）露知らず、海岸沿いで身を寄せ合うようにして救助を待つ。

彼らは軽く考えていたのだ。2、3日、いや遅くとも一週間以内には救助がやってくるだろうと。

なんたって科学が発達したこの現代において、救助が来ないわけはないのである。

だが・・・。だが、だ。一向にその気配がない。一週間を過ぎたころから生存者たちは当然のごとく焦り出す。

機体に積まれていた食料も水も底が尽き始め、みなが不安になり始める。

乗客をまとめるべき機長は生きているのか死んでいるのかわからない状態。生存者たちの中にいないのだ。

また生存者たちはここがどこの島なのかもわからない。

しかも時が経つにつれてこの島が普通でないということがわかってくる。

上述した奇妙な現象が生存者たちの周囲で起こり始めたからだ。

生存者たちはみなパニックになり、一体この島はなんなのだ？といった疑問も持ち始めるようになる。

また彼らの乗っていた飛行機は国際線であるから、生存者たちの国籍は当然のごとくさまざまだ。だから中には言葉も通じない人種もいる。

そんな彼らが救助を待ちながら得体の知れない島で共存生活を始めるのだ。そこでさまざまなどろどろの人間模様が描かれていくのは必然である。

果たして彼らの運命やいかに・・・！？

実に不可思議なドラマである。単なるサバイバルストーリーではない。

不可思議な島を舞台にして、生存者たちの人間模様が描かれているのである。

それは先行きがまったくといっていいほど読めない。それは視聴者の想像力をはるかに超えた世界がここにあるからだ。

舞台となるのは南の島（のはずである）。

外見上はいたって普通の景勝豊かな島である。

四方を海で囲まれ、その島自体は手付かずの森林が鬱蒼と生い茂っている。人が住んでいる気配もない。

シーズン1での生存者は４８名だが（シーズン２では別の生存者が登場）、物語の主格となるのは大体１０人前後。

物語が進むにつれて登場人物が死んだり、また新しいキャラが登場したりするが、シリーズを通しておおよその主格はこの人数である。

主役格が一流外科医のジャック（まあ、無人島で一番必要なのは医者だから医者がリーダーになるのは当然といえば当然）、

そして美貌だが実は犯罪者で拘留されていたケイト、

ハンサムだが悪の詐欺師ソーヤ、

英語の話せない韓国人夫婦ジンとサン（実はサンは英語が話せるが夫には内緒にしている）、

出産間近の妊婦クレア、

イラク人兵士サイード、

サバイバルハンターのプロであるロック、

陽気でフレンドリーなハーリー、

そして不思議な力を持つ少年ウォルトとその父親マイケルなど。

彼らはそれぞれがそれぞれのしがらみを抱えている。

それがストーリーの途中途中にフラッシュバックで語られるのである。

その過去の回帰場面から、生存者たちの意外な繋がりも見えてきたりもするのだ・・・。

ということは、この機がこの島に不時着したのは偶然ではないのか・・・！？

そういう疑問も自然にわいてくるのだが、これも以前として不明のまま・・・。

この事故が故意か偶然かわからないまま生存者たちは、この不可思議な島で共存生活をしいていく。（というか、せざるをえない）

当初はお互い何もしらない人間同士だったが、次第に仲間意識も芽生えはじめる。

救助がこない以上、みなで力をあわせなければこの島で生きていくことができないからだ

生存者４８名のうち主格となる人物はいずれも個性的な人物。

ちょい悪や攻撃的な人物もいるわけだから、みなで仲良くというわけにはいかない。

しかも若い男女が混じっていれば恋バナも出てきて当然・・・。

そんな奇妙な世界においての実にぐちゃぐちゃした人間関係が繰り広げられるさまは、見ている方もドキドキだ。

が、生存者たちの願いはひとつ――島からの脱出である。が、一部そうでない人もいるから始末に負えない。

さまざまな事情で島から出たくない生存者もいたりするのだ。

そして先住民たちはどうやら生存者たちを元の世界へ戻したくないも様子――。

そういった人間たちが救助活動の妨害をしたりなんかするから、生存者たちは一向に島から出られないという膠着状態が続く・・・。

物語が進むにつれ、登場人物も増えてくる。

島の先住民たちはいうまでもなく、別の場所に不時着した他の生存者たちや、以前にこの島に漂着し、そのまま抜け出せないでいる人物たち。

そして数年前に先住民にこの島に連れてこられ、帰れなくなってしまった科学者や偽の救助隊などが次々と登場してくるのだ。

また同時に先住民たちの間の過去もフラッシュバックで語られる。

そしてそこでわかる恐ろしい因縁話。彼らを統率するリーダーは真の意味での先住民ではなかったのだ。

彼は昔、先住民たちのいるこの島に、ある団体の一員としてやってきた人物だったのだ。

その彼は自分の団体を裏切り、先住民たちに寝返って、現在ではあたかも自分は最初からこの島の先住民のような顔をしているのだ。

何故にそんなことを・・・？これもまた謎、なのである。

いったい全体この島はなんなのか？

その秘密も見えたり隠れたりで実にもどかしい。（というか隠れっぱなし）

現時点においても（シーズン４まで）その謎は解明されていない。

先住民たちの正体も一向にわからないままだ。（また彼らのリーダーも元いた団体の正体もまた不明のままである）

そして島からの脱出を試みても一向に成功しないし、救助隊もやって来れない。

しかし先住民たちはこの島を自由に出入りできているらしい。なぜなぜななぜ？

常に”何故”という疑問がつきまとう。

なぜオーシャニックのひとたち、そして以前からいた生存者たちはこの島に入れたのか？

なぜ他の人間はこの島に入ってこれないのか？

なぜ生存者たちは島から出られないのか？

なぞ・なぞ・なぞ・なぞ・なぞだ。

おそらく、この”謎”は物語最終まで解けないだろう。

ここまで”謎”が多いともはやドラマ自体が”謎”である。

いったいこのドラマてはなんなんだろうか？

島から無事脱出して、よし！もとの世界に戻れた万歳！、なんて単純なドラマではなさそうなのは確かだ。

そうするとタイトルの「ＬＯＳＴ」がなんだか意味ありげにに思えてくる。

なにが「ＬＯＳＴ」なのか？

ストーリーを追いかけていくうちに、自分たちが「ＬＯＳＴ」になったのではない、自分たちは何かを「ＬＯＳＴ」したのではないか、ということが暗に匂ってくる。

それは何か？――なんだか、それがすべての謎に繋がっているように思える。

「24」や「プリズンブレイク」のような明快さや爽快さはこのドラマにない。

そのためハマる人はとことんハマるらしいが、だめな人はだめらしい。

謎がちっとも解明されないまま違う謎がでてくるので、いらいらしてしまう視聴者も多いようだ。

単純なストーリーを求める人にはこのドラマは・・・だろう。

まあそういう方にはシリーズすべてがリリースされた後で、一気に見ることをおススメする。。

とまれ、この作品が面白いのも確かだし、登場人物も美男美女が多いから見ていて楽しいのも事実。

それに加え、物語の舞台となる島もハワイで撮影しているので、映し出される景観も美しく、見応えは充分だ。

最後は夢オチで終わることなんてないように・・・、と願っていたが、それはなさそうだ。

これには安心した。ここまでひっぱといて、実は全部夢だった・・・なんてやだもんね。

シリーズ最終まであとわずか。

この島の正体がわかるのが楽しみ。

それもとてつもなく・・・。


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