ハケンの品格

 

2007年日本テレビ作(全10話)

 

脚本:中園ミホ

 

出演:篠原涼子

 

 

 

 

 

ドラマ「Anego」で主役を好演した篠原涼子主演のドラマ。脚本も「Anego」と同じ中園ミホ。

企業で働く人材がハケン社員で大多数を占めるようになった当世、それに狙いを当てたかのように放映されたドラマである。

だからハケン社員の人たちの心の叫びを代弁しているようなストーリー仕様となっている。

ハケン社員が正社員に向かって、会社に向かって、そして社会に向かって、叫んだ心の悲鳴がこの作品につまっている。

大多数のハケン社員の人はこのドラマを見て、「そうだ!そうだ!」とTVの画面に向かって声を上げたのではないだろうか。

 

本ストーリーの主役となるのは、大前春子という30代半ばのハケン社員として働く女性である。

しかもただのハケン社員ではない。スーパーなハケンなのだ。企業間においては彼女は伝説化までされている。

彼女がスーパーとされるのは、資格取得数30以上を持ち、何でもこなせる女性だからだ。ちなみに語学も堪能(数ヶ国語話せる)。

だからひっじょーに高いお給料をもらっている。なんと時間給3000円なのである!

(補足すると、普通の事務の仕事のハケン社員のお給料は大体1500円前後である)

これだけでも彼女が別格のハケン社員であることがよくわかる。

それに加え彼女は契約期間3ヶ月で延長は一切なし、残業なし、飲み会参加なし、という徹底したワーキングスタイルを保持している。

過去において98の会社をハケンとして働いてきたが、そのスタイルを一環させたまま崩さず現在もそれを続行させているのだ。

彼女の時間給やワーキングスタイルに驚かされる視聴者は多くいたかもしれないが、ドラマを見る限り、彼女の仕事ぶりは3000円以上に思えるし、

またワーキングスタイルにいたっては、これはハケン社員としては当たり前のこと・・・だと思うのがわしの意見である。

ハケン社員は会社内においてはひっじょーに弱い立場にある。

だから強者である正社員のいうがままの奴隷になってしまい、本来のワーキングスタイルが見ないふりにされてしまっているのだ・・・。

残業なし・・・なんてホントは当たり前なのだ。

時間内に終わらせるように業務を配分するのが正社員の仕事であり、もしそれが出来ないのであれば、ハケンの人は定時であがってもらい、

残った仕事は正社員で片付ける・・・というのが本来のあり方なのだ・・・。

 

物語はそんな彼女が大手食品商社S&F会社で勤務し始めるところからスタートする。

このS&Fという会社はもちろん架空の会社だが、日本の会社の集大成ともいえる。

それは実によく日本の会社を現しているからだ。

このドラマを見ながら、みな「なんかこの会社うちの会社みたい」と思った人はたくさんいたはずだ。

部内を統括するワンマン部長桐島、

出世を狙って部長に側近のように従う営業社員伊藤、

性格はいーんだが、いまいち要領が悪くて会社での栄光をつかむのは難しいと思われる里中、

出世はとっくの昔にあきらめて仕事をまったくせず、人の良さで会社に居座り続ける小笠原、

ようやっと仕事にありつけることができた新米ハケン社員の森、

仕事はできるけどプライドの高さが邪魔してグループの輪に入り込めない黒岩、

時給1500円で働く事務のハケン女性軍団、などなど・・・。

それらがひとつの会社でさまざまな人間模様を繰り広げるのである。まさしく現代の等身大の会社である。

ただ本作品はハケン側が主体となっているので、正社員が悪者に見える。

それは作品の主旨が日本の企業に勤めるハケン社員の置かれている状況の辛さをわかってもらおうとしているからだ。

脚本家はそのハケン社員の心の声を代弁したのだ。

そして大前春子は「正しいハケン社員のあり方」そして「正しい派遣社員の扱い方」を言葉で語らずに実際に実践して示している。

だから正社員の人たちは見ていて感じ悪くなるのかもしれない。

ホントは正社員の人たちだってハケン社員の人たちに言いたいことがいっぱいあるのに違いないのだが・・・。

ストーリー半ばで里中が「ハケンの人ってこんなにいたんだ」とつぶやいたようにホントに現代の企業にはたくさんのハケン社員が勤務している。

いわば派遣の人で持っているようなものなのだ。

それにも関わらず、その存在を忘れられてしまっているのだ。正社員と同じようにきちんと会社で働いていて貢献しているというのに・・・。

私はここよ!ちゃんといるのよ!見て!その仕事は私がしたのよ!と心の中で叫びを上げているハケン社員はたくさんいるだろいう。

彼らが支えてくれるから企業は成り立っているのだ。そんな彼らをないがしろにしたら、怒りをぶつけられても文句は言えまい。

しかもほとんどのハケン社員は名前で呼ばれず「お前」とか「ハケンの人」って呼ばれているし・・・。

当初のポリシー通り、大前春子は契約3ヶ月でS&Fを去る。最後まで彼女は「正しきハケンの姿」を崩さなかった。

そんな彼女が社内に与えた影響は計り知れず・・・。

 

物語の醍醐味となるのは春子と伊藤のかけあい。実にこれは漫画的で愉快だ。

視聴者の多くは二人の漫才的な掛け合いに大爆笑したのではないだろうか?

物語の最終まで二人は最初から最後までスタンスを崩すことなくこのかけあいをし続ける。

また伊藤が物語の終盤で「転職って大変だったんだ。ハケンの人の気持ちがわかったような気がする」とつぶやいた言葉に対して、

「してやったり!」と思った人は多かったのではないか?

「どう?少しは私たちの気持ちがわかった?」とほくそ笑んだ人もたくさんいたことだろう。

ハケンで勤務している人がこのドラマを見ればかなりすっきりすることは確かだ。

いつも自分たちをいじめている社員が自分たちと同じ境遇におとされて同じ気持ちを味わっているのだから・・・!

 

それにしても中園ミホの脚本というか世界観って高橋留美子の描く世界に似ているように感じる。

本作はなんとなく「らんま1/2」を彷彿させるし、Anegoでは「めぞん一刻」を感じさせる。

コマ割の仕方とかキャラクター設定の仕方とか。ストーリーはまったく違うけど・・・。

そう思うのはわしだけかしらん・・・?

 

 

 

 

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