夢がたり

久保田早紀

 

 

 

タイトル

作詞

作曲

編曲

1.

プロローグ・・・夢がたり

 

荻田光雄

 

2.

久保田早紀

久保田早紀

荻田光雄

3.

異邦人

久保田早紀

久保田早紀

荻田光雄

4.

帰郷

久保田早紀/山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

5.

ギター弾きを見ませんか

久保田早紀/山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

6.

サラーム

久保田早紀

久保田早紀

荻田光雄

7.

白夜

久保田早紀

久保田早紀

荻田光雄

8.

夢飛行

久保田早紀/山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

9.

幻想旅行

山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

10.

ナルシス

山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

11.

 星空の少年

山川啓介

久保田早紀

荻田光雄

 

1979年にリリースされた久保田早紀の音楽集である。名曲「異邦人」を含め、全11曲収録されている。

そのすべてが外国語を使用していないのにも関わらず(カタカナでは多少使用)、異国情緒がかなり濃い。また幻想的で物語的ある。

曲はどれもリズムが単調であり、フレーズも口ずさみ易いため、覚えやすく歌いやすい。

だから「夢がたり」とタイトル通り、簡単に夢の世界へと誘われる。

冒頭の「プロローグ」は、曲のみ。切ないけれど心地よいピアノの音が胸にしみこんでくる。

幻想世界への旅、夢の物語の始まりである。

見知らぬ世界で目を覚ました「朝」・・・。自分が何者かがわからない・・・。「此処は何処 今は何時なの 私は誰」と自身に問いかける。

そして気づく。自分は「空と大地が触れ合う彼方」にいるである「異邦人」だということに。

此処では、誰も「過去からの旅人」の自分を気にとめたりなどしない・・・。

「哀しみもて余す」自分は「帰郷」する。「この坂を上りつめ」たところにある故郷に。そう、確かにあった。昔と変わらぬままの「ふるさとの街」は。

けれど自分は変わってしまった。自分の居場所は、求める場所は、もうこの故郷ではないのだ。

自分が求めているのは、そう、”あの人”もとだ。だから”あの人”をさがす。

「うしろ姿がやけに寂しいギター弾きをみませんか」と”あの人”を訪ねてさすらう。しかしみな「黙って首をふるばかり」だ。

何処?”あの人”は何処?何処にいるの?「サラーム」と叫ぶ。「どれほど歩いても 離される 遠ざかる」だけ。「だけど会いたい」・・・。

しかし星は告げる。「あの人は帰る」と。”あの人”が自分のもとへ帰れば、夜は明ける。この「薄紫をまとう空」「白夜」が。

だから自分は「羊のように静かに待っているだけ」しかできない・・・。

けれど”あの人”に会えない苦しい切ない想いからは逃れられない。心が勝手に「夢飛行」してしまう。

思い出の腕から遠ざかりたくて、忘れたくて、自我を消失させてほしいと望んでしまう。

「名前も姿も顔も過去さえも変われる国」へ行きたいと願ってしまうのだ。

そしてついには「幻想旅行」してしまう。このやりきれないほどの「かわく胸」「うるおせるオアシス」をさがして心が非現実世界へと旅立ってしまう。

あてのない悲しい旅路だったが、それは過去への回帰の道に繋がっていた。

そして思いだす。”あの人”のことを。”あの人”はこの世界にはいない幻想世界の人だったということを。

名前は「ナルシス」。青い瞳のきれいな少年。過去の「罪びとのときめき」「柱時計の音」がそれを蘇らせた。

長い旅路の末、ついに自分は見つけたのだ。”あの人”を――。”あの人”は何処ででもなく、すぐ近くに存在していた。そう、「降るような星空」の中に。

”あの人”は「オリオン」に抱かれていた。「新しい星」になって。”あの人”は「星空の少年」だったのだ。

そして夢の旅は終わる・・・。

それは「誰一人気づかない夜の出来事」だった・・・。

 

 

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