Stock 中森明菜 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1988年にリリースされた中森明菜氏の12枚目の音楽集。全10曲収録されている。 当時氏は歌手として絶頂期にあった。この音楽集はそのときの氏のシングルリリースする候補であった曲群である。 だから1曲1曲が素晴らしく、そして洗練されている。 また全曲がハードなロック調であり、かなりのスピード感がある。色に例えるのならば、ジャケット通り”真紅”。 それを氏は見事に歌いこなしている。 氏の代表曲の1つである「DESIRE」の作詞家・阿木燿子氏は、氏のことを「詞のイメージを広げることのできる歌手」と評していたが、 まさにその通りであることがこの音楽集を聞くとよくわかる。 この女性の情念のつまった曲群を氏は見事に歌いこなしているのだ。 冒頭は「別れ」の意味の「FAREWELL」。閃光で切り裂くような曲だ。出だしからハイスピードである。 「星が涙になり海に落ちたなら運んでね 遠く・・・」と詞も格好いい。 「夢のふち」はまるでサスペンスドラマの主題歌のよう。「薄紅の空を渡る鳥のよう・・・」というフレーズがいい。情景が目に浮かぶ。 「CRYSTAL HEAVEN」の作詞は女優の浅野ゆう子氏が手掛けている。だからかなりドラマチック。 「水晶の叫び声で目覚めた朝」で始まり、最後は「Heaven!」と叫ぶように歌いあげて終わる。 「まだ充分じゃない」の歌詞も凄い。愛を充足するまで巡礼を自分に誓っている。それも「ジャンヌ・ダルク」に例えて。 「FIRE STARTER」は本作品集の主軸ともいうべき歌である。他の曲もハードだが、この曲には勝らない。 まさに炎・炎・炎なのだ。心の奥底から不死鳥のごとく燃え上ってくる愛憎の炎。 氏の周囲に鮮烈な真紅の炎のオーラがまとっているイメージが脳裏に浮かんでくる。 「NIGHTMARE 悪夢」はホラーなタイトルなのにも関わらず、おぞましさは少しもない。 むしろ肯定的なクールさを感じる。ポリシーを持った悪女の印象だ。 「I WANNA CHANCE」はやはり最終章がいい。「Don''t Go Away」と叫びながら歌っているのが胸を打つ。 「POISON LIPS」も同じく最終節にグッとくる。「し・み・じ・み・あ・な・た・を守れる女性になりたい」と艶やかな歌い方がいい。 「処女伝説」は異国情緒が漂っている。地中海の波の音や香りを感じることのできる歌だ。 最終曲の「FOGGY RELATION」はそれまでの曲調から少し変調する。 アップテンポであるのは変わりないが、明るく爽快になる。 「FOGGY RELATION」とは「霧が立ち込めた関係」という意味なのだが、暗さはない。 むしろ愛情とはそういうもの。そしてそれを肯定し、楽しんでいるという印象を受ける。 「FAREWELL」(別れ)から始まった激しい愛の物語は、最後「人を愛する」ことの喜びを改めて知って幕を閉じている。 男を愛したら辛い別れや逃れられない苦しい嫉妬に苛まされ、悪夢を見たり、切ない叫びをあげてしまう。 だが「愛する」ということは、この世に生を受けた限り、至上の喜びなのだ。 この音楽集はそれを伝えている。まさしく「愛の讃美歌」集である。
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