EAST
ASIA
中島みゆき | |||||||||||||||||||||||
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1992年にリリースされた中島みゆき氏の音楽集である。 シングルリリースされた「浅い眠り」「誕生」「糸」の3曲を含めて、全9曲収録されている。 本作品からは大地を、地球を、そしてそこに生きる人々を見つめる氏の暖かいまなざしを感じる。 冒頭は、タイトルの「EAST ASIA」。 ユーラシアの風が心地よく優しく身体を撫でてくれるような曲だ。 詞もまたそれに沿っている。 この世のしがらみ、そして苦しみや悲しみなどの負の感情から解き放ってくれる、そんな感覚を覚える。 「EAST ASIA」を直訳すると、「東アジア」だが、それは地理学上ではユーラシア大陸の東部にあたるアジア地域のことを指している。 中国、朝鮮、そし我らが日本が含まれている。氏はこの地域内の国をを国境で区分せずにすべてでひとつの「国」であると歌っている。 「国の名はEAST ASIA 黒い瞳の国 難しくは知らない ただEAST ASIA」 言語や宗教が違っても、瞳の色は同じ。つまり同じ人なのだ。 それは、国境など存在はしない、ということの示唆。「力だけで心まで縛れはしない」のだから。 始まりから感動的な音楽集だが、主軸となるのはなんといっても「二隻の舟」である。 またこの歌こそ、氏の今までのシンガーとして、人して生きてきた想いの集大成といえよう。 見事な言葉の綴りが、語りかけるような曲調で、しみじみと心に広がっていく歌だ。聞いていると自然と涙がこぼれおちてくる。 「お前と私はたとえば二隻の舟 暗い海を渡っていく二隻の舟」 「二隻の舟」は人の生を航海に例えている。 人生を歩んでいく道は決して容易ではない。 難しいことや、有り得ないこと望んでいなくとも、「風は強く 波は高く 闇は深く 星も見えない」ような、試練続きの道程だ。 それでも、人は生きなければならない。何があっても。 生きる力の源となる人間の「愛」が、「たかが木の葉」のように、ちっぽけなものであっても。 「超えてゆけ」と叫ぶ声が聞こえる限り・・・。それが「ゆくてを照らす」のだから・・・。 そう、本作品「EAST ASIA」は人としての自分の生き方を今一度考えさせてくれる、そんな音楽集である。
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