カレリア 工藤静香 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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フィンランドの南東部からロシアの北西部にかけて森林と湖沼の多い湿地帯を”カレリア”と呼ぶ。 本作品はその”カレリア”の地をイメージした工藤静香氏のアルバム音楽集である。 instrumentalを含めて、全8曲で構成されており、その全曲が管弦楽団によるバックミュージックである。 また収録もフィンランド当地で行われた。 そのためかなりクラシック要素の強い音楽集となっており、工藤静香氏の音楽集の中でも異彩を放っている作品である。 ”カレリア”――と響きの良い地名だが、決して安らかな地ではない。 極寒の厳しさや、他国からの侵略に苛まされた過酷な地である。 それでもこの地で人々は生きてきた――。
「ああ どうしてここへうまれてきたんだろう」 「恋しても永遠に結ばれない」 「時は運命さえ連れ去ろうとしている」
胸打つ哀愁に満ちた言葉が詞に織り込まれている。 それが切ない短調の音階になぞらえられて、ノスタルジックで幻想的な雰囲気を醸し出しており、胸に響く。 また北方の地の情景も刹那的に描写されている。
「霧に流されていく 針葉樹の森を 翔けていく想い」 「遠い地平線に消えた橇の跡」 「雪が荒野を白く変える ただひたすらに 振り続ける」 「六月の沈まぬ太陽のように」
まるで”カレリア”という地そのものが、幻想世界のような描写である。 しかし”カレリア”は存在する。確実に。 その地に息づいて生きている人々はいるのだ。 物悲しい曲調が続くが、最後の歌「la se n」は”カレリア”を肯定している。
「わたしに似ている人が 手招いている」 「夜明けの瞳 すべて見守るように」
生命の螺旋は廻り廻って”生きている私自身”、”カレリア”に出会う。 そして終曲「真昼の夢へ」…。
今のは夢…?すべて…?”カレリア”はやはり幻想だったのだろうか…? 丘の上の太陽も、みずうみも、美粧の森も…。
でもこの胸の痛みはなんだろう? 熱くこぼれ落ちる涙も…。
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