阿刀田高(あとうだ・たかし)


 <作家略歴>

            1935年生

            新潟県長岡市出身

            早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業

            大学卒業後は、国立国会図書館に勤務するが、1972年に退職する。

            以降、執筆活動のみに専念する。

            1978年「ナポレオン狂」で第81回直木賞受賞

            1979年「新トロイア物語」で第29回吉川英治文学賞受賞

            文部科学省設置の文化審議会会長

            日本推理作家協会理事長(1993−1997)

 

 <ひとりごと>

            わしは阿刀田さんが大好きである。作家の中で一番好きだ。

            初めて彼の小説の読んだのは、中学生か高校生の時だったと思う。

            彼の小説を読むきっかけとなったのは、彼の著書「ギリシャ神話を知っていますか?」というエッセイだった。

            わしは昔からギリシャ神話が好きだったので、このようなタイトルのエッセイを書く人は一体どんな人なのだろうかと興味ひかれたのだ。

            だが、最初に読んだのはこのエッセイではない。後にこのエッセイも読んだが・・・。

            確か何かの短編集だったと思う。忘れてしまったがとても面白かった。

            よくこんなんで好きだと言えるな、と思わないでほしい。

            彼の著作はそれこそ膨大で、短編の名手と異名をとるほど実に多くの短編を書いているのだ。

            その数八百余り。今尚、その執筆の勢いは止まらないでいる。

            とにかく、その短編が素晴らしく面白かったのだ。

            彼はその当初から既に数多くの本を出版していたので、わしは片端から読み漁っていった。

            彼の名が<ア行>なのが幸いした。何処にいっても彼の本はすぐに見つかるのである。本屋でも古本屋でも図書館でも。

            わしはすぐに彼の描く奇妙な?世界にはまりこんだ。

            彼の描く世界は奇矯で面白く、日常の中にいながら非日常を味わえることができるのだ。

            文章もまた洗練されていて読みやすい。きちんとした文法のきちんとした日本語で書かれているのにも関わらず、少しも堅苦しくない。

            活字がすいすい頭に入り込んで、脳裏でストーリーが簡単に映像化されてしまうのだ。

            彼はよく「国語」を知っている作家だと思う。けれど難しい表現方法や芸術的な言葉の羅列を文章の中には用いていない。

            それは、彼が「小説とは楽しんで読むもの」ということを基本にしているからだろう。

            彼はもちろん長編やエッセイも描いている。それらも優れているし面白いと思うが、やはり彼の本領は短編だと思う。

            事実、彼自身も短編小説をこよなく愛してるし、短編小説(彼以外の作家)を読むことを勧めている。

            昨今はエッセイの中で、「短編小説と心中したい」とまで語っている。

            だが、わしとしてはそんな先のことは考えないで、長編でも短編でもがんばって書き続けてほしい。

            まだまだ彼の素晴らしい作品を読み続けたいのであーる。


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