小池真理子(こいけ・まりこ)
1952年生まれ
東京出身
成蹊大学文学部英米文学科卒業
出版社勤務後、フリーライターへ。その後執筆活動を始める。
現在軽井沢在住。夫は小説家の藤田宜永。
1978年「知的悪女のすすめ」を発表
1981年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞
1996年「恋」で直木賞を受賞
1998年「欲望」で島清恋愛文学賞受賞
わしが小池真理子氏を知ったのは、なんと30代を過ぎてからである。
何故それまでこんな素晴らしい偉大な作家を知ることができなかったのか。
もっと早くに彼女の作品を読んでいたら、どれだけ自分の人生が変わっていたかと思うと、本当に悔やまれてならない。
そう思えるほど、彼女の書く小説は本当に素晴らしいのである。
わしが最初に読んだ彼女の作品は、短編集だった。文庫本化されている「小池真理子の〜シリーズ」の一冊である。
ある日、図書館に行ったとき何気なくその本が目に入った。
当時、阿刀田さんの影響により短編が好きになっていたわしは、面白そうだと思って借りて帰った。
(そのときわしは罰当たりにも、彼女が直木賞作家だということを知らなかったのだ!)
その短編集の面白いこと面白いこと。わしはあっという間に彼女の描く世界に魅了されてしまった。
わしは次々に彼女の短編を読み漁るようになった。
彼女の短編はどれも面白かった。
ストーリー性が高くて非常にスリリングに富んでおり、結末への展開の仕方が実に巧みなのである。
そのため読み手をはらはらどきどきさせながら、最後まで惹きつけてはなさないのだ。
そしてさらには登場人物の正確や心理描写が明確に表現されているため、感情移入が単純にできる。
読み手は登場人物と感情を同調させながらストーリを楽しむことができるのだ。
自分が本の中の登場人物になったかのような錯覚さえ起こしてしまうほどだ。
わしは貪るようにして彼女の作品を読みまくった。
そして一通り短編を読み終わってしまったので、今度は長編に手を出すことになった。
これまたびっくり。素晴らしい!短編とはまったく違う味わいがあるのである。
短編と長編とでは書き分けをしているのであろうか。別人が書いたかのようにも感じてしまうくらいだ。
彼女の短編の虜になっていたわしは、長編を読むのは最初気がすすまなかった。そして読み始めてすぐ後悔した。
何故もっと若いときに彼女の長編を読まなかったのかと。
彼女の真の骨頂は長編にあると言える。
著作は多数だがどれも素晴らしい。一作一作が夜空の一等星のように生きて光輝いている。
写実的な透明感のある美しい筆致で描かれた文章は、清流のようにすいすいと心の中にしみいってくる。
その彼女の描く世界は本物よりもずっと本物らしく、また生々しく、重厚な存在感がある。
まるでギュスターヴ・クールベの描く絵画のようだ。
そして始めから終わりまですべてがせつない。
読み手に、心の中をナイフですっぱりと切られてしまうような感覚を覚えさせてしまうほどだ。
作品ごとにその刹那さは研ぎ澄まされていっている。
またそれに比例して作品の格調の高さも上がっていっているようだ。
今後の作品も大いに楽しみである。
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