妖魔

著者:楠桂

 

 

 

人気漫画家・楠桂さんの初期作品です。
1985年〜86年にかけて、漫画雑誌「りぼんオリジナル」で連載され、単行本は前編・後編の二巻で刊行されました。
(文庫本は1998年に全一巻で刊行)
物語は全六章で構成されています。

其ノ壱 まほろばの章
其ノ弐 火蛾岬の章
其ノ参 血の闇ヶ原の章
其ノ四 愁へ笛の章
其ノ伍 亡者夜話の章
其ノ六 妖魔決戦の章

時は戦国。
緋影(ひかげ)という名の忍びの青年が主人公です。
緋影には、魔狼(まろう)という名の親友がいました。
同じ時期に拾われた彼らは、兄弟のように育ち、里でも一、二を競うほどの腕の立つ忍びへと成長しました。
そんなある日、緋影は、誰かが投げた毒が塗られた手裏剣により、右目に傷を負ってしまいました。
その手裏剣を投げたのは魔狼でした。
そのため、緋影が生死の境をさ迷って寝込んでいる間、魔狼は里から追放されてしまったのです。
無二の親友である魔狼が、そんな卑怯な真似をしたとはどうしても思えない緋影は、里を出て彼を捜しに行きました。
魔狼は、意外とすぐに見つかりました。
寂れた古寺の近くにある村にいたのです。
しかし何故か魔狼は緋影のことがわからない様子でした。
そして今までのことも忘れてしまっているようなのです。
村に住んでいる“あや”という名の少女の話によると彼は三日前にやって来たとのこと。
様子を見ることにした緋影は、あやの家に寝泊まりさせてもらうことにしました。
この村の民たちは、明るく気さくな人柄で、夜には皆で集まって楽しく宴会をしたりします。
魔狼も緋影のことはわからないままも楽しく宴に加わっています。
しかしこの村にいるのは全員、妖魔に操られていた人間たちでした。
彼らは、妖魔が自分の餌にするために幻術をかけて集められた行き場のない者たちだったのです。
緋影はその妖魔を倒し、村人たちは幻術から解放されますが、その正気に戻った彼らによって村は滅茶苦茶に荒らされ壊滅してしまいます。
魔狼もまた何処かに姿を消してしまいました。
再び魔狼を追う緋影。
その先々で妖しい異形のモノたちと出くわします。
そうしていくうちに魔狼がただ者ではないことがわかってきました。
何故か、奴らは魔狼のことを知っているのです。
そして里長に頼まれて、緋影を引き留めにきた兄貴分の風見からも奇妙な話を聞きました。
歴史にも残っていないはるか昔、陸の妖怪と海の妖怪が争っていたのだが、そのために人間に滅ぼされてしまったのだと。
しかし世が乱れたとき、妖魔たちは復活し、人間たちに復讐をし始めると。
多くの血が流れ、乱れに乱れた戦乱の世は、妖魔が目覚めるのには絶好のときです。
緋影の行く先には、常に死体が転がっていました。
戦の世ならそれは珍しくない光景ですが、それらはみな首がなかったり、身体が引き裂かれていたり、内臓を引きずり出されていたりしているのです。
戦死者ではなく、人外のモノに襲われたことは明白です。
妖魔が蘇り復讐を始めたのです。
緋影も幾つかの妖魔と対峙します。
それも故意に彼を狙ってくるのです。
妖魔たちは一様に鬼陸皇子(きくがのみこ)に命令された、と口にします。
果たしてそれは何者なのでしょうか?
何故緋影を狙うのでしょうか?
魔狼は何処に行ったのでしょうか?
果たして緋影は魔狼を連れ戻すことができるのでしょうか?
そして真実は――!?

35年前(2020年現在)の作品ですが、今読んでも新鮮に感じます。
展開がスピーディーで勢いがあり、スイスイ読み進められます。
戦国の世らしい、血生臭い雰囲気がよく出ており、タイムスリップした気分になります。
“人間”対“妖怪”のお話ですが、単純な勧善懲悪ではなく二重三重に入り組んでいます。
かといってそれほど複雑化はされておらず、読みやすくて面白いです。
起承転結もはっきりしており、きっちり六章で話をまとめあげているので、とても分かりやすいです。
(漫画はこれが大事!)
少女雑誌に掲載された作品ですが、老若男女楽しめる漫画です。
アニメ映画化された作品でもありますが、実写版にもして欲しいです。
特にアクションシーンが素晴らしいので、絶対カッコいいと思います。

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妖魔 (全2巻)

 

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