魔女の媚薬

著者:大海とむ

 

 

 

と、ある北国の港町でハーブショップを営む女性が主人公の物語です。
彼女の名は望月香子(もちづきかおるこ)。
両親はおらず、ただ一人の身内であったハーブ研究家の祖母が二年前に他界すると、自身で店を開いて、常連さんたちに支えられながら慎ましやかな毎日を送っていました。
そんなある日、彼女の元にエリートサラリーマン風のイケメン男性がやってきたことから、その穏やかな生活が一変します。
その男性の名は日比木要(ひびきかなめ)。
彼は香子のお母さんを守る騎士だと言いました。
母親はとうに死んでいたものと思った香子は当然驚きます。
またその母が黒魔女で、さらには二年前に亡くなった祖母は白魔女であったということを聞かされました。
そんな話は信じられなくて当然、来訪した男性・日比木を怪しげな宗教勧誘か押し売りかと思いこみ、追い返そうとします。
しかしその直後、香子はそれが真実であることを知ります。
自分の内から魔力が溢れだし、周囲にいた人間が何かに取り憑かれたように香子に迫ってきたからです

人気漫画家・大海とむさんが、2011年〜2013年にかけて漫画雑誌「プチコミック」で連載した作品です。
単行本は全5巻刊行されました。
タイトル通り「魔女」なお話です。
このモチーフも食傷気味とはいえ、やはり惹かれてしまいます。
「魔女」は、古今東西の人々が永遠に追い求めてやまぬ神秘的存在です。
この魅惑的な題材に大海さんが得意の官能的ラブロマンスをたっぷりと盛り込んで甘やかなストーリーに仕上げたのが本作品です。

主人公の香子は大海さんが描くおなじみの、控えめで、超がつくほどのお人好しの女性です。
背は高いけれど地味で目立たず、23歳になった今でも恋人はいません。
これはストーリーを追っていくうちに明らかになるのですが、実は祖母が故意に彼女をそのように育てたからなのです。
香子は要から、彼女の母親はすべての黒魔女の頂点に立つ“魔女王”で、ある使命のために深い眠りにつき、その強大な力を娘である香子を器にして託したと告げました。
そして魔女の資質を持ちながら、まったく無自覚な香子を守るためにやって来たということも。
自分ではどうしようもない状況に置かれ、いたしかたなく香子は要と同棲生活を始めます。
しかし母からの使命とはいえ、自分を守ってくれる男性に心傾いていくのは自然の成り行きです。
香子は要に惹かれていきますが、事はそれほど安易ではありませんでした。
強大な魔女王の力をその身に宿しただけでなく、香子自身も脅威的な魔力を有していたからです。
彼女は自身の力を制御すべく、黒魔女としての修行を始めました。
垢抜けなかった香子は、要からの愛情も加わって、色気たっぷりの魔女へと変貌していきます。
しかも精神は汚れなき天使のごとき白魔女ですから、その魅力は筆舌しがたく、魔女王に身も心も捧げて忠誠を誓った要を完全に虜にしてしまいます。
二人は相思相愛の仲になりますが、取り巻く環境はそれを許しません。
果たして二人の愛の行方はどうなるのでしょうか。

こんなステキな魔女ならなりたいかも、と思ってしまうストーリーです。
しかも自分に絶対忠実な素敵な騎士がいるのであれば最高ではないですか。
背景描写も素晴らしいです。
しんしんとつもる深い雪におおわれた森の奥深い地にいる神秘的な魔女。
衣装もコスプレ好きにはたまらないでしょう。
魔法に欠かせない小道具も随所に描かれていて楽しめます。
水晶やストーン、薬草、ハーブ、月桂樹など。
「媚薬」を呑まされ、ひととき魔女の魅惑魔法にかかった気分にさせられる作品です。


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