聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話

著者:手代木史織

 

 

「聖闘士星矢」は今から(2013年現在)、約25年前に週刊少年ジャンプで連載された漫画です。

単行本は28巻まで刊行され、アニメ化にもなり、爆発的な大ブームを巻き起こしました。

わしはこの漫画が大好きでした。

この作品については、たくさんの他のサイト様でご紹介されているので、ここではあらすじ等の紹介は省きます。

わしがここで皆様にご紹介したいのは、その「聖闘士星矢」が原案となった手代木氏が描いた「ロストキャンバス」なる作品です。

本作品はオリジナルの星矢が終了してから15年後、手代木氏によって、週刊少年チャンピオンにて連載されました。

単行本は25巻まで刊行され、これまた大好評を博しました。

現在は外伝が6巻まで刊行されています。(多分12巻まで刊行されるでしょう)

わしがこの「ロストキャンバス」なる作品を読んだのはごく最近のことです。

単行本が出版されていたのはずっと以前から知っていましたが、読む気になれなかったのです。

わしの中では車田正美氏が描いた「星矢」が絶対だったので、他の漫画家が描いた作品を読んだら、自分の中の「星矢」が崩れそうで怖かったのです。

(手代木先生ゴメンなさい)

ところが・・・。ところがです。

本作品はそんなわしの暗い思惑を吹き飛ばしてしまう程、面白かったのです。

本作品を読む気になったのは、アニメ化された本作品を見たときです。

何気なくDVDを借りて見たところ、アニメの素晴らしい出来栄えに感動したからです。(アニメを見てない人は見てみよう。実に芸術的な仕上がりとなっています)

わしはアニメを見終わった後、すぐに書店に足を運び、単行本全25巻をまとめて買いあげました。

そして一気に最終巻までページを読み進めました。読了後はもちろんその世界にどっぷりとハマってしまっていたのは書くまでもありません・・・。

本作品のお話はオリジナルの「星矢」から遡ること243年前のイタリアから始まります。

主人公はもちろん天馬座(ペガサス座)の聖闘士。名前はテンマ君です。

彼はイタリアの孤児院で暮らす少年でした。

両親はおらず、貧しい生活を強いられていましたが、いたって彼は明るく元気。

腕っ節は強く、ケンカは負け知らずです。(まあこれは聖闘士として宿命を背負っているので当然といえば当然なのですが)

その彼には親友がいました。

名前はアローン君。絵を描くのがとても上手な心優しい少年です。

彼もまたテンマと同じく孤児の身で、二人は一緒の孤児院で兄弟のように暮らしていました。

ある日のこと、自分は聖闘士だという男がテンマの前に現れました。

テンマは聖闘士となる宿命を持つもの、だから自分とともにギリシャの聖域へ来い、とその男は言いました。

その男とはオリジナルの星矢でも我々を笑わせて・・・いや、楽しませてくれた若かりし日の天秤座の黄金聖闘士・童虎。

テンマはもっと強くなってアローンや孤児院で一緒に育った皆を守りたいと思い、聖闘士になるために童虎について聖域へ行く決心をしました。

ずっと一緒だったアローンに別れを告げて・・・。

ですが、それが悲劇の始まりだったのです・・・。

「この世に邪悪がはびこるとき、必ずや現れる希望の戦士。それが戦女神(アテナ)の聖闘士」

聖闘士が出現したということは、邪悪がこの世に跋扈しはじめた兆候です。

その邪悪とは死を司る冥界の神・ハーデスとその部下の冥闘士たちのこと。

ハーデスは神話の時代、自分の肉体を傷つけられたため、魂だけを転生させ、この地上において最も清らかなる少年を依り代にして幾度も蘇ってきました。

そしてハーデスが転生し、地上を我が物にしようとするのを常に阻止してきたのが戦女神(アテナ)とその聖闘士たちです。

また神代にハーデスの肉体に傷つけたのは天馬座の聖闘士でした。

だからハーデスは戦女神はもちろんのこと天馬座の聖闘士もとても憎んでいます。

そう、テンマはとてつもなく大きな宿業を背負っているのです。

それだけではありません。今生においてハーデスの依り代に選ばれたのはなんとアローンだったいうから驚きではないですか。

テンマが聖域に行って後、アローンの中で眠っていたハーデスの魂は、徐々に目覚め始めたのです。

すると戦女神(アテナ)は・・・?ハーデスが転生したのであれば、戦女神も今生転生しているはず・・・。彼女は一体何処に・・・?

これまた驚愕です。今生、戦女神として転生したのはアローンの実の妹・サーシャだったのですから!!

サーシャはテンマが聖域へ向かう何年か前に、聖域からの使い(射手座の黄金聖闘士・シジフォス)により、聖域に連れて行かれていたのです。

テンマが聖域でサーシャと再会を果たした一方、、アローンはハーデスとして覚醒してしまいます。

冥王と化した彼は、この地上にいる人々の絵を描き、天空に飾り始めました。

死を司る彼に描かれた人々の命の火は消え失せます。

つまりアローン、ハーデスはこの地上の全ての人々の絵を描くことで地上を滅ぼそうとしたのです。

天空に描かれた死の絵――それがロストキャンバスです。

ロストキャンバスが完成したら、この地上は滅んでしまうのです。

それを阻止すべく戦女神は聖闘士たちと立ち上がりました。

聖戦の始まりです――。

神話の時代より繰り返されてきたハーデスとアテナの戦い。本作品はオリジナル星矢の前聖戦の物語です。

オリジナルと大きな違いは人気の高い黄金聖闘士がたくさん活躍するところでしょう。

オリジナル星矢では、ハーデスとの戦いが始まる前に、聖域で内乱が起き、ほとんどの黄金聖闘士が死んでしまっています。

(何てもったいない、と思いますが、オリジナルはあくまで星矢たち青銅聖闘士が主役なのでいたしかたないです)

本作品では黄金聖闘士12人が一人一人キチンとたたかって、活躍の場を見せてくれます。(これはポイント高い!)

しかしそれでも主役のテンマが陰ることはありません。これは手代木氏の描写の実力ですネ。

また黄金聖闘士たちは容貌や性格は似てはいるものの、完全に別人です。名前ももちろん違います。

これがまったく同じ人物描写だったら、本作はパロディ漫画で終わっていたでしょう。

(ただ山羊座のエルシドはほとんどシュラそのものに思えますが)

特に蟹座と魚座の読者方は喜んだのではないでしょうか。

酷い扱いだったオリジナルに比べ、えらく格好良く描かれましたから。

(魚座なんか三巨頭の一人・ミーノスを倒してるもんなあ)

ジャミール一族の女聖闘士・ユズリハの活躍も嬉しいです。(彼女は白鶴座の白銀聖闘士。眉毛がシオンやムウと同じなのがポイント)

露出度も高く、派手に戦ってくれ、読者を興奮させてくれます。

性格はビミョーに違うケド、冥闘士たちはオリジナルと同じ名前で登場します。(手代木氏オリジナルの冥闘士ももちろんいます)

オリジナルではあまり見ることのできなかったその冥闘士たちと黄金聖闘士たちの戦いが本作では描かれました。

また双子座の兄弟の戦いを見ることができたのも最高です。オリジナルでは見ることのできなかったサガとカノンの戦い。それが見れたのですから。

彼らのファンは涙流したことでしょう。

さらにはオリジナルのシオンの名科白「うろたえるなー小僧!」が使われたことや雑兵なのに人気のあったマルキーノの登場には思わず失笑してしまいます。

そして何と言っても一番活躍したのは、あの方ですね。あの御方。

あの方ってどなた?なんて聞かないでください。わかるでしょう?あの方です。

そう、パンドラちゃんです。

いやー凄いインパクトでしたね、彼女は。

転生したハーデスの魂の姉、そして冥王軍の幹部という設定はオリジナルと同じですが、本作ではオリジナルでは見られなかったバトルシーンが描かれています。

その強いこと強いこと。

長く美しい髪をなびかせ、素敵な太股を露に見せながら豪快に戦う姿には圧倒されました。

本作では三巨頭の一人ラダマンティスの直属部下バレンタインと太陽鷲の輝火と戦っています。

(輝火との戦いは中断されますが・・・。これは残念)

彼女は最終決戦前に途中退場となってしまいましたが、随分話を盛り上げてくれました。

と、本作の魅力をずらずらと並びたてましたが、お話の一番の醍醐味は、今生ではハーデスとアテナが兄妹として生まれたことにあるでしょう。

兄妹に生まれてもなおかつ戦わねばならぬ宿命――その悲劇的な要素に多くの読者はきっと魅せられたハズ。

タイトルがまたいいですよねえ〜。「ロストキャンバス」なんて格好良いじゃないですかっ!!

最終巻のコメントに作者の手代木氏は「ロストキャンバス好きっス」と書いてありましたが、わしも好きっス。好きっス。大好きっス。もー最高っス。

 

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