サラディナーサ

著者:河惣益巳

 

 

 

実をいうとこの物語の主人公は好きではないのです・・・。

美人でお金持ちで才能に恵まれていてみんなから愛されている・・・。

まさしくこの世は私のためにある状態の主人公・サラディナーサ。そのままタイトルにもなっています。

物語は16世紀のヨーロッパが舞台。スペインが「陽の沈まぬ王国」として牽制を誇っていた頃のお話です。

サラディナーサはそのスペイン王国に雇われた海賊の一族フロンテーラの総領です。

繰り返しますが、この主人公は恵まれています。恵まれすぎるくらい恵まれています。ほんとにほんとに恵まれています。

何もしなくとも、他人が喉からほしがるものを当たり前のように手にしています。

貧乏人ど根性物語の好きな私にはこのあたり・・・で、ちょっと納得ができません。

生まれたときから一族の総領としてみなから認められ愛されるなんて、「ズルい」と思うのです。

まあ、この作品が下から上へ上り詰めていく人間成長のストーリーではないからそれは仕方のないことかもしれませんけど。

おっと、批判的に書いてしまいましたが、ストーリーはすっごく面白いです。

前述した主人公の境遇が恵まれているのは、ストーリー上に欠かせない要素となっているからですね。

つまり美人でお金持ちで才能があってみなから愛されていないとストーリーは展開していかないのです・・・。

物語上では欧州王族ら実際の歴史上の人物がたーくさん登場します。

フェリペ2世やエリザベス女王、そしてオレンジ公ウィリアムなど。

歴史的人物はストーリーの展開上かなり脚色してあるというものの、世界史の勉強にもなります。

実際の史実と読み比べて見るのもまた楽しいですよ。

主人公が魅力的だからその周囲にいる男性たちも素敵です。

彼女の父である「独眼の獅子」の異名をとるレオン、レパントの海戦の英雄ドン・ファン、英国海賊ドレイクの息子マシュー。

いずれも当代随一の男ばかりです。果たして彼女が選ぶのは誰なのか――?

それは、本書読んでください・・・。

 

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