はるかなるレムリアより

著者:高階良子

 

 

 

「はるかなるレムリアより」は高階良子さんの代表作品です。
高階さんは数多の作品を出版されていますが、一番人気は本作ではないでしょうか。
本書は1975年に講談社より初刊行されました。
少女漫画の域を越えた壮大でロマンチックなこの物語は、大人気を博し、当時の自分の周囲でもかなり話題になりました。

その物語は失われたムー大陸が下地になっています。
本書での併記はタイトルにもなっている「レムリア」。
主人公は涙(ルイ)という名の少女です。
ストーリーは、そのルイが幼いときに、仲良しだった少年ノンが失踪したところから始まります。
ノンはルイの目の前で浦島塚という洞窟内にある崖から消えてしまったのです。
「竜宮城へ行く」と言って。
当然、大人たちは大騒ぎします。
ルイは見たままのことを話しますが、当たり前ですが誰も信じません。
ルイはそれ以来、「頭のおかしな娘」とレッテルを貼られてしまいました。
それから8年の時が過ぎました。
しかしルイはやはり変わらず「いかれっ娘」のままでした。
そんなある日、ルイの前に一人の青年が現れました。
その人は、ノンが消えた浦島塚の入り口のところに佇んでいたのです。
神秘的な、ギリシャ神話のアドニスのような美しい青年です。
ルイはその人に向かって無意識的に「ナーガラージャ」と呼びかけました…。

いじめられっ子やみそっかすが実は凄いヤツだった、というストーリー展開は漫画ではお約束のパターンです。
本作もそう。
虚言癖のために周囲や家族からも疎まれていたルイは、実は人類の女王であり、世界の救世主でした。
彼女は七万年前に滅んだレムリアの女神だったのです。
滅びの原因は悪しき女神ガアリイ。
かの地の頂点に立とうとしたところ、女神(ルイ)に拒まれたため、彼女を殺害してしまったのです。
女神を失ったレムリアは一夜のうちに海に沈みました。

ムー大陸はアトランティス大陸同様、古代に海に沈んだ大陸として伝説化されています。
高度な文明を誇った地であったことも伝承化されており、作家のインスピレーションをそそり数多の物語が創作されています。
本作では、レムリアを滅ぼした黒き女神が現代に蘇り、再び野心を遂げようと、やはり現代に転生した女神(ルイ)を我が物にしようとします。
しかし物語冒頭ではまだルイは女神として目覚めていません。
かつて女神の配下であったノン(ナーガラージャ)やその仲間は荒療治でルイを覚醒させることにしました。
世界を救うため、ルイは女神に戻り、ガアリイを倒さなくてはならないからです。
果たしてルイは女神として再び世界に平和をもたらすことができるのでしょうか。

読み手を思い切り世界に引きずり込んでくれる実に魅惑的なお話です。
失われた伝説の大陸の女神が、屈強な配下を従えて、悪者をやっつけて世界を救うのというのですから。
物語の見せ場は幾つもありますが、強烈に心に残ったのは、ルイが女神として覚醒する場面です。
ルイが洞窟内の崖から落ちていくシーン、そしてその地の底にいる仏像たちに投げられた剣で喉を指し貫かれたシーンは、かなり衝撃的でした。
本作を読んだのは齢一桁でしたし。
さらにはその後、ルイがそれに屈せず、腹に突き刺さった剣を引き抜き、仏像に投げ返して「消えろ」と怒鳴って追い払った姿には、見惚れてクラクラしてしまいました。

レムリアの女神として覚醒したルイはまるきり別人。
「変人」の面影はどこにもありません。
「変身願望」のツボを押さえてくれる、カッコいいお話しです。

★本作品ご購入希望の方はこちら↓
はるかなるレムリアより(講談社漫画文庫―高階良子傑作選)

 

【戻る】