ジョセフへの追想

著者:渡辺多恵子

 

 

 

「ファミリー」で人気を博した渡辺多恵子氏が、その連載終了後に描いた短編です。

当時、わしは氏の作品では「ファミリー」しか知らなかったので、本作品を読んだときにはもの凄い衝撃を受けました。

それは高橋留美子氏の作品「炎トリッパー」を読んだときに受けた衝撃と同じものでした。

(それまで、わしは氏の作品では「うる星やつら」しか知らなかったので・・・)

つまりですね、「この人こんなシリアスな作品も描けたんだ!」という驚きです。

巨匠に対して大変罰当たりなことなのですが・・・。

とまれ本作品はその巨匠が描いた短編ということもあって、すっきり綺麗にまとまっています。

ストーリーはまるで映画のようです。(実写版にできる思います。いや、してほしいんですが・・・)

今から(2009年現在)20年以上も前の作品だというのにも関わらず、今読んでも鮮烈な印象を受けます。

物語の舞台となるのは素朴さが広がる美しい緑豊かな島。

そこで育ったジョセフとユニスが主人公です。

と、こう書くと「ダフニスとクロエ」を想像しませんか?(三島由紀夫の「潮騒」の方が馴染み深いか・・・)

実際、上記の作品に似た透明感が物語の最後まで広がっています。

穏やかでこれからも続くであろう、と思われた二人の幸福な日々。

が、ある日ジョセフの身に異変が起き、それが崩れ去ってしまうのです・・・!

そんな物語のラストはとても切ないものです。ホントにホントに切ないです。自然と涙がこぼれ落ちてくるほどです。

物語の終局で「何故かたまらなく悲しいことを思い出して気がして――」と語って涙をこぼしたユニスのように――。

当時もでしたが、今探してもこんな作品はないと思います。

だから、是非読んで欲しいのです・・・。

 

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ジョセフへの追想 全1巻(小学館文庫) 

 

 

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