ドクターGの島

著者:高階良子

 

 

 

江戸川乱歩は、大正から昭和半ばにかけて活躍した小説家です。
闇に蠢く怪人(あるいは怪物)を登場させる怪異譚を得意とし、ミステリーや推理小説を多く描き、幅広い読者層から支持されて、現代でもその人気は続いています。
漫画家・高階良子さんはその乱歩の作品をいくつか漫画化しました。
「黒とかげ(原作:黒蜥蜴)」や「血とばらの悪魔(原作:パノラマ島奇談)」がそうです。
そして本作「ドクターGの島」も同様で、原作は乱歩の傑作の一つと言われている「孤島の鬼」です。
タイトル通り、舞台背景が孤島のため、高階さんの他作品の「化石の島」に表紙も内容も似ています。

主人公は小夜子という名の美しい女子高生です。
小夜子は姉の朝子の恋人・俊一に片思いをしていました。
バレンタインデーの日に、姉の名を語って俊一にチョコを渡したその後、なんと彼は何者かに殺害されてしまいます。
彼は自宅でナイフで滅多刺しにされたのです。
一体、誰が、何のために?
部屋の中からは金目のものは盗まれていなかったので、強盗の犯行ではないようです。
小夜子は悲しみに暮れますが、恋人であった朝子は気丈で、意味深な言葉を吐いて深く考え込んでいます。
そして数日後、今度は朝子が胸にナイフを刺されて死亡してしまいます。
大事な人を続けて亡くした小夜子は、悲嘆し、そして二人を殺害した犯人を激しく憎むようになります。
その彼女の元に小包が届きます。
それは俊一からのものでした。
俊一は殺される直前に小夜子に宛てて送っていたのです。
中身は系図と日記でした。
照らし合わせて読んでいくと、その日記は俊一の弟・健二が書いたものであることがわかりました。
書かれているのは現実離れした恐ろしいことでした。
そして二人が殺されてしまった事由も示されているのです。
一人では抱えきれない難事に、小夜子は、自分に好意を寄せていて、事件のあらましも知っている医学者・諸戸に相談しました。
諸戸はすべてを教えるから、約束の場所に来い、と言いました。
小夜子は言われた通りに従いますが、その途中薄気味悪い男に拉致され、車で連れ去られてしまいます。
そして次に小夜子が目を覚ましたのは「ドクターGの島」だったのです。
果たして小夜子はどうなってしまうのでしょうか。

本書は1978年に講談社より初刊行されました。
本作を初めて読んだのも、「化石の島」と同じく齢一桁の時でしたが、やはり強烈な印象を受けたのを覚えています。
時が経つにつれ、ストーリーの内容は朧気になっていきましたが、残虐に人を殺すシーンや気味の悪い怪物たちがうんじゃらうんじゃら描かれていたことは心に焼きついていました。
特に、回転椅子に座っていたドクターが振り向き様に小人の首をメスでかっ切ったシーンは、鮮烈過ぎて脳裏から消すことができませんでした。
少女漫画誌掲載作品であったから驚きです。
(現在では掲載不可かもしれませんが)。

本作を読了した数年後、原作を読みました。
漫画は脚色してあることがわかりましたが、どちらも面白いと感じました。
読み比べるのも一興ですね。

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ドクターGの島(なかよしKC)
孤島の鬼 江戸川乱歩

 

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