化石の島

著者:高階良子

 

 

 

高階良子さんは大好きな漫画家です。
齢一桁だった頃から、彼女の作品に囚われ夢中になり、周囲の世界が見えなくなるほど没頭して読み耽りました。
覚えた言葉の数も少なく、自我も確立していなかった年代なので、ストーリーの内容はきちんと把握できなかったのですが、それでも熱中してしまいました。
しかし彼女の作品は、少女漫画に分類されてはいるものの、官能的で残虐なシーンがある上、子どもには見せられない汚れた大人の世界の描写も多くありました。
それでも、いえ、だからこそでしょうか、彼女の描く世界に強く魅了されたのです。
とりわけ好きだったのは「はるかなるレムリアより」「地獄でメスが光る」「ピアノソナタ殺人事件」でした。
どの作品も、子どもが読んで大丈夫なんだろうか、と思えるような残酷な描写がありました。

本作「化石の島」もそうです。
本書は1976年に講談社から初刊行されました。
美しい女性とグロテスクな生き物が描かれた表紙絵が、子供心にも強烈なインパクトを受けたのをまだ覚えています。
内容も負けず劣らず凄絶でした。
冒頭から恐ろしい怪物が登場します。
それはトカゲの顔をした人間(?)でした。
それも目を背けたくなるような醜悪さです。
子どもが見たら絶対に泣き叫び、夜怖くて布団から出れなくなること間違いなしです。
それでも何故か見てしまうのです。

その物語のヒロインの名は美保。
両親を亡くし、病気の叔母と暮らしている不遇な女性です。
雑誌社で見習いとして働いていましたが、ある日仕事を通じて、時の人である人気レーサー聖光太郎と知り合います。
光太郎には不気味な影や噂がつきまとっていましたが、二人はひかれあい結婚しました。
そして数ヶ月経ったある日、光太郎はレース中事故に遇い、両足を切断されてしまいました。
それから二人の幸福は崩れていきます。
美保が病院にかけつけたとき、光太郎の姿はありませんでした。
美保は光太郎が戻ってくることを信じて待ちながら、彼の子を産みます。
しかし今度はその子が連れ去られてしまったのです。
しかし美保にはわかっていました。
子どもを連れ去ったのは足を無くしたはずの光太郎だと。
美保は彼の故郷へ行く決心をしました。
そこに彼がいると確信したからです。
そして光太郎の秘密もそこにあると。
美保は単身、沖縄のはるか先にある光太郎の生まれた島へ向かいました。
しかしそこは美保の想像の及ばぬ場所であったのです。

忌まわしい因習に縛られた閉鎖社会は現在にも存在します。
それは創作家にはインスピレーションをそそり、また一般人には好奇心を煽るモチーフとなります。
閉ざされた世界の向こうに何があるのか、恐ろしいと思いながら、見たい、知りたい、という誘惑には勝てません。
そんな読み手の欲求を満足させてくれるのが、高階さんの作品なのです。

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