ほのかにパープル

著者:さいとうちほ

 

 

 

1985年5月〜1986年12月まで少女漫画雑誌「コロネット」で長期連載された、さいとうちほさんの作品です。
単行本は全3巻、文庫本は全2巻刊行されました。

ヒロインは松尾紫野(まつお・しの)という名の高校三年生です。
物語は、彼女が同命館大学にある万葉集の研究書で有名な万葉図書館で運命の出会いを果たすところから始まります。
その古くからある図書館には伝説がありました。
それは「万葉図書館に初めて足を踏みいれて出会ったふたりが男と女だった時ふたりは恋におちる」というものでした。
紫野はそこに初めて足を踏み入れたとき、やはり初めて足を踏み入れた男性・山科晃生(やましな・あきお)と出会うのです。
しかし、彼は実は父親の再婚相手の息子でした。

父親の再婚により、紫野と晃生はひとつ違いの血のつながらない兄妹になりました。
年若い男女、それも伝説の図書館で出会った二人が一つ同じ屋根の下に住むのです。
二人の仲が恋愛に発展するのは自然なこと。
二人は伝説通り相思相愛になります。
ですが、義理とはいえ兄妹。
周囲の目は厳しくありました。

今(2021年時点)から30年以上も前の作品ですが、画はキレイで読みやすく、万葉歌を下地にした奥深いストーリーです。
恋愛=人間愛を描く漫画家さいとうちほさんの原点が見えます。
ただ、おおらかになった現代の恋愛観点からでは、多少の違和感があります。
ストーリー途中、二人は父親の反対を押しきり、家を出て同棲生活を始めます。
周囲は兄妹でありながら恋愛関係になっていることと、学生の身で同棲していることに冷たい視線を向けます。
現代では、恋愛中の男女が同棲するなどさして珍しくないですし、兄妹でも血が全くつながっていないのであれば恋愛の障害にはなりません。
一昔前は恋愛が保守的であったことを思い出しました。

古都・京都を舞台に繰り広げられる、一人の人間への愛を貫く真摯な姿勢が描かれためくるめくラヴロマンスストーリーです。

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ほのかにパープル (全3巻)

 

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