エキドナ

著者:冬木るりか

 

 

 

2003年〜2005年にかけて漫画雑誌プリンセスゴールドで連載された冬木るりかさんの長編作品です。
単行本は全5巻刊行されました。

タイトルの「エキドナ」は、上半身は美女で下半身は蛇、背中には翼が生えた姿をした怪物です。
やはり怪物である「ラミア」や「リリス」と同一視されており、悪魔の長サタンの妻でもあります。

天使と悪魔の物語は古今東西数多創作されてきました。
それを片端から読み漁り、いささか食傷気味となっていますが、やはり魅力的な題材には変わりなく、つい手に取って読んでしまいます。

自分の拙い知識にある聖書に登場する天使と悪魔というと…。
神様の御使いであった天使ルシフェルは、天に背き戦を仕掛けました。
しかし破れて地獄に堕とされます。
そして堕天使となったルシフェルは地獄を統べる悪魔王サタンとなります。

このエピソードをベースに「エキドナ」のストーリーは展開していきます。
ヒロインは「エキドナ」になる前の「リリス」です。
この物語の「エキドナ」はどんな荒ぶる魂をも鎮めることができる慈愛と母性の象徴という設定です。
「リリス」は自身の眠っている力に目覚めると「エキドナ」になります。
だから「リリス」は悪魔なのですが、その容貌は汚れなき天使のごとき美少女なのです。
そのリリスはまだ16歳ですが、魔界の王サタンと婚約していました。
17歳の誕生日を迎えたらサタンと結婚して彼の正妃になるのです。
その花嫁修業中の身のリリスが、家出して人間界にやってきたところから物語は始まります。
結婚を嫌がってのことではありません。
彼女には目的があったのです。
それは人間のピュア・ソウルを狩って集めることでした。
ピュア・ソウルは悔いのない思いを遂げた人間の魂です。
リリスは、その魂を、人生最後の願いを叶える引き換えとして手にするのです。
清らかな乙女の姿をしているといえど、リリスは悪魔です。
悪魔と契約した人間は二度と転生ができません。
それでも、生まれ変われなくとも願いを叶えて欲しい、という人間はたくさんいます。
しかしリリスは生まれたときからサタンの花嫁になることを決められていた深窓のお嬢様です。
つまり世間知らずの箱入り娘なのです。
そんな彼女を一人で人間界にいさせるなんて、とんでもない話です。
両親のいないリリスを後見するアリオーシュは、彼女を連れ戻そうと人間界にやってきて説得を試みますが、リリスは頑として言うことを聞きません。
アリオーシュは仕方なく、花嫁になる17歳までに魔界に帰ってくるこという彼女の言葉を信じて、一人のボディーガードを置いて帰ります。
彼の名は「サード」。
華奢な体つきの、背もリリスと変わらない、金髪の美しい少年です。
しかし腕は立ちます。
目付きも悪く言葉遣いも乱暴な彼とリリスは人間界で共に過ごしていくことになりました。
果たしてリリスは無事にピュア・ソウルを集めていくことができるのでしょうか?
そして彼女はそのピュア・ソウルで何をしようというのでしょうか?

物語は一話完結式で進んでいきます。
「最後の願い」を叶えたい人間が登場し、そしてリリスはその思いを遂げさせ、ピュア・ソウルを手にしていく、という形式です。
人間界は天界の支配下にあるので、天界の使徒(天使)は悪魔が地上にいるのは好みません。
リリスたちを追い払おうとする天使も登場し、彼女の仕事を邪魔してきます。
またサタンが正妃を迎えることを快く思わない愛妾が殺意を持って襲ってきたり、反逆者アスタロトもちょっかい出してきたりします。
それらからサードはリリスを命掛けで守っていきます。
自分の命が危うくなりそうなときもありました。
いくら護衛を頼まれたからとはいえ、何故にそこまでリリスを守ろうとするのでしょうか?
それは、すべては大昔の悲しい出来事が起因となっていたからなのです…。

冬木さん特有の美麗かつ華麗な画で繰り広げられる豪快なアクションが最後まで続きます。
展開も早くて、読みやすいです。
各話ごとの人間が最後に望む「願い」にも感動します。
さて、自分だったら人生最後のときに何を望むでしょうか。
それも二度と転生できないほどの願いとなると…!?

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