紅 クライシス・レッド

著者:冬木るりか

 

 

 

「紅」と書いて「クライシス・レッド」と読む本作品は、1998年〜2000年にかけて月間漫画雑誌「プリンセス」で連載された冬木るりかさんの長編作品です。
単行本は全5巻刊行されました。

主人公は莎紅良(さくら)という名の炎を操る鬼です。
髪も瞳も血のように紅い色をしていますが、普段は人間の姿に化けています。
どちらの姿も、容姿、プロポーションともに抜群の20歳前後の外見ですが、実際は500年以上の時を生きています。
莎紅良には白王という名の力の強い鬼の恋人がいました。
しかしその者は500年前、自分の力をあることのために使い果たしてしまったため、水晶化して深い眠りについてしまったのです。
更にはその後、その水晶化された体を何者かによって砕かれてしまいました。
莎紅良はそれ以来、ばらばらに散った白王のかけらを探し集めていました。
すべてのかけらが揃ったとき、白王は蘇るのです。
と、ある私立高校にそのかけらがあるという情報が入りました。
莎紅良は女子高生になりすまして、学校へ潜り込みます。
しかしそこには莎紅良たち一族の天敵である鬼を狩る一族の加賀家の若き当主がいたのです。
莎紅良は無事に白王のかけらを手にすることができるのでしょうか?

「人間」対「人外の者」のバトルストーリーも食傷気味になっていますが、やはり魅力的な題材で惹かれてしまいます。
そして本作も意に違わず面白かったです。
しかもラブロマンスもたっぷり盛り込まれているので、読み応え抜群でした。
それが敵同士であった男女の間であったから尚更です。
莎紅良が、500年以上思い続けた恋人から突然現れた仇敵の人間に心惹かれていくさまには目が離せませんでした。
二人は確かに敵同士ですが、共通の敵(かなりぶっとんだキャラクターです)もいて、その者を倒すために手を組みます。
そして反発しあっていた二人の心は磁石のように引き合っていきます。
それでも上手く自分の感情を表現することができない当主は、過去の残酷な経験もあいまって自分の気持ちに素直になれません。
そんな彼に心惹かれているのは莎紅良も自分でわかっています。
物語は途中で二十年の時を越えます。
年若だった当主も成長し、愛することがどういうことかわかり、自分の気持ちに気づきます。
しかし莎紅良には白王がいます。
果たして彼女が選ぶのはどちらなのでしょうか?

物語の読みどころ、見どころは、豪快なアクションシーンです。
冒頭からかましてくれて、そのテンションの高さは、他の冬木作品同様にラストまで変わりません。
ビジュアルクイーンとも思える莎紅良が、露出度の高い服でハデなバトル劇を魅せてくれます。
悪者がはっきりしており、しかも読み手も胸が悪くなるような輩を、莎紅良がぶっ飛ばすシーンには胸がスカッとします。
勧善懲悪のストーリーはあまり好みではないのですが、本作の読了後感はスッキリでした。
結末にも納得です。


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紅 クライシス・レッド (全5巻)

 

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