美貌の果実
著者:川原泉 |
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今から(2009年時点)20年以上前に描かれた、川原氏の大地三部作シリーズの一作です。 物語のヒロインとなるのは葡萄農園を営むお家のお嬢さんである秋月菜苗さん。 突然の交通事故でお父さんとお兄さんを亡くしてしまった高校三年生の少女です。 物語は彼女が二人を亡くしてから二ヶ月たったところから始まります。 二人を亡くしてからこの二ヶ月間、菜苗さんはお母さんと悲嘆に暮れていました。 しかし、いつまでもそうしているわけにはいきません。 彼女は残されたこの農園をお母さんと二人で守っていくことを誓いあいました。 が・・・。”しっかり者親子”を自称しているものの、どーみてもお気楽極楽トンボなお二人です。 これは秋月家の危機だ!と察したこの地の守り神である行基さまは、秋月家の葡萄に宿っている精霊を目覚めさせました。 行基様に叱られて起きた美貌の葡萄の精は、秋月家を助けるために実体化し、母子の前に姿を現します。 そして三食おやつ付きという条件の無料奉仕で秋月家の葡萄栽培を手伝い始めたのです・・・。 と、秋月家は葡萄栽培もしますが、ワインも製造しているお家です。 その「サン・スーシィ(お気楽者)」と名づけらているワインは、有名なグルメ評論家が太鼓判を押すほどの優れモノでした。 だから儲けを企んだメーカー企業が、なんとかしてこのワインを手に入れようとうとするのは当然です。 そうして秋月家に、酒販メーカーの人たちがやってきました。 そのうちの一人が業界でもトップである社長の都築貴英さんです(年齢は不明ですがおそらく30代半ば)。 社内で酒部門が低迷している今、なんとかして契約を結ばせようと、社長である彼が自ら秋月家に出向いてきたのです。 が・・・。彼は極楽とんぼな二人の親子に懐柔(?)されてしまい、商談は全く進みません。 それどころか毎週秋月家にやって来ては、飯を食べさせてもらい、5歳になる娘も遊んでもらってしまっている始末です。 当初の目的は何処に・・・?って感じで、彼は秋月家に溶け込んでいきます。 そんな彼らを葡萄の精はにこやかに見守ります・・・。 この都築さんは、少女漫画のヒーローにしては年がいってます(しかも離婚歴ありの子持ちですし)。 ヒロインとなる菜苗さんとは親子ほど年が離れていますが、二人は物語の終末でめでたく結婚します。 少女漫画では受け入れることが難しい年齢差設定だったのにも関わらず、本作は大勢の読者に支持されました。 それはやはりストーリーが心温まる涙誘う感動的なものに仕上がっているからでしょう。 日本昔話を連想させる、川原氏の不朽の名作です。 ぜひ、読んでみてください。
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