アトランティス

著者:星川とみ

 

 

 

昭和57年3月〜58年12月まで月間少女漫画雑誌「なかよしデラックス」で長期連載された作品です。
単行本は全4巻刊行されました。

アトランティス大陸はムー大陸同様はるか古代に海に沈んだ地として伝説化されています。
本作はタイトル通り、そのアトランティス大陸を舞台にした物語です。
時は今より遡ること一万二千年前、アトランティス大陸はアメリカとアフリカ間の大西洋上にありました。
楕円の形をしたこの大陸は十の国で治められており、資源が豊かで高度な文明を持っていることから、近隣諸国をも支配する大強国として存在していました。
物語の主人公は、十の国の一国アラ=ラトの地に住む農民の娘ルーラ。
明るく元気な正義感の強い心優しい17歳の少女です。
ルーラは心根の優れた両親と暮らしていましたが、彼らとは血の繋がりはありませんでした。
彼女は3歳のときに、大きな白いワシによってこの夫婦のもとへ連れてこられたのです。
そして実の娘と変わりない愛情を沢山受けて健やかに育ちました。
このまま平穏に時が過ぎていくと思いきや、彼女の運命を大きく変える出来事が起こりました。
アトランティス全土を襲っている悪の化身「紅とかげ」が彼女の住む地にやって来たのです。
「紅とかげ」は王宮と町を破壊し、王夫妻を殺害しました。
王夫妻の息子の王子と友人であったルーラは王宮にかけつけますが、その途中「紅とかげ」に襲われて血を流して倒れていた一人の老人と出会います。
その老人は、自分はアム=ルークという名の占星術士であることを告げた後、ルーラを見て驚きます。
そしてルーラが自分の占いに現れたアトランティスを救う女神であると告げ、南の大国ムーアへ向かえと言い残し、息絶えました。
ルーラは、その言葉通り、愛する両親のもとを離れ、単身ムーアへ向かって旅立ちました。

アラ=ラトの地を離れてから、ルーラは常に命を狙われ続けました。
理由はわかりません。
しかし自分でもわからぬ不思議な力や旅の道程で仲間となった心強き者たちに守られながら、危機を脱し、ムーアへと辿り着きました。
そこで自分の出生を知るのです。
ルーラはなんと現ムーア王の実の娘で王女だったのです。
彼女は、3歳のとき、双子の姉シーラとともに何者かに王宮から連れ去られてしまったのでした。
シーラはいまだ行方知れずです。

「大いなる宇宙を見晴かす瞳と輝ける日輪のごとき熱き心を持ちたる若き女神アラ=ラトの地にありていまだ眠れり。やがて選ばれし戦士とともに邪悪なる星を打ちくだかん」
それがアム=ルークの占いでした。
ルーラが命を狙われ続けたのは、王女であったこともありますが、アム=ルークの占星通り、真実アトランティスを救う女神であったからです。
アトランティスには、気の遠くなるようなはるか昔に、宇宙の彼方からやって来て、最初に超文明を築き上げた者たちがいました。
彼らは伝説化され、後にアトランティスでは「神」と崇められました。
ルーラはその末裔だったのです。
そしてその祖先たちとともにこの地に降り立った者の中にカリストという名の恐るべき才能を持った科学者(物語中では魔術師と称)がいました。
彼はこの地をすべて支配するために、長きに渡り、人々が神と崇めるアトランティスの祖先の血をひく者たちを葬ってきたのです。
ルーラとシーラも同様でした。
カリストは、ルーラたちが3歳のときに、配下の者に命じて襲わせたのです。
ルーラはそのときに神の守護鳥である白ワシに救われたのでした。
そして優しい夫婦の下で神の守護を受けながら、カリストに気づかれず成長したのです。
しかしシーラは?
シーラは一体何処に!?

カリストが世界を支配するためには、アトランティスの祖先の神々が残した大いなる遺産が必要でした。
それは、いかなる物も貫く神剣、神の力を持つことができる王冠、一瞬にしてアトランティスを破壊することのできる石、の「三つの秘宝」と呼ばれるものです。
ルーラは、自分が神の末裔であることを教えられた守護神に、選ばれし戦士たちとともに、悪の存在カリストからこの三つの秘宝を守ることを課せられました。
しかしカリストは、気の遠くなるような年月、闇の王として君臨してきた恐ろしい魔術師です。
その力はルーラの守護神と同等であると言われました。
またカリストには、どんな残酷な命令にも従う非情で屈強な子どもたちもいました。
アトランティスを破壊しまくっている悪名高い「紅とかげ」もカリストの息子の一人でした。
ルーラは、そんな強敵たちと戦わねばならないのです。
信頼できる仲間がいるとはいえ、いまだ女神として目覚めていない一人の少女の肩に、この世界に生きるすべての人びとの運命が委ねられました。
果たしてルーラとその仲間たちは秘宝を守り抜き、カリストの魔の手からアトランティスを救えるのでしょうか。

昭和の漫画は展開がスピーディーです。
息もつかせぬほどの速さで、ストーリーが進んでいきます。
そのため無駄がなくて読みやすく、伏線をはりながらも終局にはきちんと回収して辻褄を合わせ、最後には読み手を納得させてくれる形で終わらせてくれます。

少女漫画の主人公らしく、ルーラには次から次に苦難が襲いかかります。
ムーア王の娘、そして神の血をひく者であるために常に命を狙われ続け、そしてようやっと帰ってきた故郷では、現政権を握る女丈夫に魔女扱いされ、処刑されそうになりました。
また再会できた実の父親や自分とともに戦ってくれた友にも先立たれます。
騙され、裏切られもしました。
人質を取られ、脅迫もされ、目の前で大事な人を殺されもしました。
しかし最も大きな試練はシーラの存在でした。
ちょっとネタバレしてしまいますが、シーラは生きています。
幼い頃無理矢理引き裂かれた分身とも言える半身、ずっと会いたかった双子の姉シーラ。
父王が亡くなった後は、彼女のただ一人の肉親となりました。
その彼女とルーラは意外な形で再会を果たします。
それは物語中最大のクライマックスシーンで、読み手はルーラとともに驚愕の真実に震えます。

読みどころは他にも沢山あり、全4巻のストーリー中にそれらがぎゅっと詰まってます。
悪の王カリストを倒すことが主線ですが、アトランティスの何処かに隠されている「三つの秘宝」を探す冒険譚も内包されており浪漫も感じられます。
「三つの秘宝」は、それは絶対にカリストには渡してはいけない、聞かされていた以上にスゴいモノでした。
ルーラやシーラのそれぞれの愛にも胸が迫りました。
個性的な戦士たちも大活躍して場を盛り上げてくれました。

アトランティスは伝説の大陸。
高い文明を築きあげたことや一夜にして海に沈んだことが伝え残されています。
本作「アトランティス」は、その理由が描きこまれた壮大なスケールの物語です。

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アトランティス (全4巻)

 

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