エイリアン通り

著者:成田美名子

 

 

成田美名子氏は大人気コミック「CIPHER」の作者で知られる漫画家です。

「CIPHER」は、今から20以上前に「LaLa」で長期連載されたとてもとても人気のある作品でした。

どのくらい人気があったかというと、それは漫画を普段読まない人でもこの単行本は購入していた、というくらいの・・・。

ほとんどの当時の女子中高生は、この作品にはまっていたのではないでしょうか?

女の子たちの間では、サイファ派とシヴァ派に分かれて議論も行われておりましたから・・・。

でもね、わしは駄目だったんです。この作品・・・。自分の感性にそわなかったというのでしょうか。

みなが夢中になるように、この作品にはまることができなかったんです。

作品自体の出来栄えは素晴らしく、名作であることには間違いありません。

が・・・。これは好みの問題。こればかりは仕方がない。

本作(エイリアン通りの方)で語られているように、和食は好きだが納豆は駄目・・・というのと同じで・・・。

だから・・・。だからですね、わしはこの「エイリアン通り」を長い間読むことをしなかったんです。

本作は「CIPHER」の前に描かれた長期連載作品だったので、わしは勝手に「どうせ似たようなストーリーに違いない」と思い込んでし

まっていたのです。

が・・・。あるときふと思い立って、この作品のページをめくってみたところ、びっくり!

面白いのなんの!「CIPHER」とぜんぜん違うんです!

すっかり「似たようなお話」と思い込んでいたわしの思い込みは、一瞬にして消え去りました。

そして全8巻を読破した頃には、ずっかりこの作品に傾倒してしまっていたんです・・・。

お話の舞台はアメリカのロスアンジェルス。(「CIPHER」の舞台もアメリカですが、こちらはNY)

シャール君というそこに住む金髪碧眼の美少年(かなり大人びているので美青年という言葉の方があっているかも)が主人公です。

彼はまだ15歳なのですが、4年飛び級しているので、すでに大学生です。

そんな彼の住むお家はとてもゴージャス。どうやらアラブの大富豪の息子さんらしいのですが・・・。

物語はそんな彼とジャーナリスト志望の大学生のジェラールが出会ったところから始まります。

このジェラール君は、まっすぐな気質を持った気持ちのよい青年です。

と、このジェラール君、ある事件がきっかけで、成り行きのままシャール君の家に居候するようになりました。

そのシャール君の家にはいろんな人がいました。

小さくて童顔なため、シャール君と同い年なのに、小学生の男の子に間違えられる翼。

シャール君のお家を取り仕切るバトラーと呼ばれる執事。

なんやかんやでジェラールは彼らとひとつの家で楽しく過ごす日々を送るようになりました。

と、そんなある日のこと。このお家に長い黒髪の美青年がやってきました。

彼の名はセレム。不思議な雰囲気を持った男性です。彼はかつてシャール君の家庭教師をしていた人物でした。

久しぶりの恩師との再会ですが、なぜかシャール君は彼のことを警戒している様子。

二人の間はギクシャクしていて、その緊張感は周囲にびんびん伝わってくるくらいです。

これはおかしい・・・とジェラール君が感じた矢先、なんとシャール君はいたずら好きの女の子に誘拐されてしまったのです。

ここから物語は急展開していきます。シャール君の隠された過去が暴かれるのです。

実はシャール君は自分の生い立ちが原因で、子どもの頃に心に深い傷を負い、人を信じられなくなってしまっていた少年でした。

それはセレムとの確執にも繋がっていました。

ですが不幸中の幸いというか、この事件をきっかけにして、事態は良き方向へと向いていきます。

皆が一丸となってシャールを救おうとした思いが、彼の凍った心を溶かしはじめたのです。

やがてこの誘拐事件は解決し、そしてシャール家にセレムも加わります。

タイトルが「エイリアン」とされているように、この家にはいわゆる「はぐれもの」が集まっています

しかも血の繋がりなど全くない、国籍も年齢もバラバラな人たちです。

しかしそうであるのにも関わらず、彼らは実に楽し気に暮らしています。

物語中において、「ここはシャールのホームグラウンド」と表記されているように、それはまるで本当に家族のようで――。

これはすべての人が憧憬を持つ絆の形ではないでしょうか。

血の繋がりなんて関係ない――。大好きな人たちとずっと一緒にいたい――。ずっと一緒に暮らせたら――。

そんな誰もが手に入れたいと願う「ホームグラウンド」。

それがここにあるのです・・・。

 

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