ART POWER
Part.1
ヴィーナス誕生  アレクサンドル・カバネル
   

生まれてはじめて美術館なるものに足を踏み入れたのは高校二年生のときだった。
横浜博覧会で開催していた「メトロポリタン美術館展」。
そのときに展示されていた作品の中にアレクサンドル・カバネルの描いた「ヴィーナス誕生」があった。
この作品を前にしたとき、その圧倒的な美しさと迫力に気押された。
足が、いや、全身が固まった。動けなくなった。
何分も何分もこの絵の前で立ち尽くした。
何も考えられなかった。
まるで魔法をかけられたかのようだった。
そう、かけられたのだ。
このときに絵の魔力に囚われてしまったのである。
これより後、絵画は我が人生において大きな割合を占めることになった。
美術館という美術館に足を運んだ。海外の美術館にも行った。
そして数多くの名画に出会った。
言葉にできない感動を幾たびも味わった。
たった一枚の絵が素晴らしき人生の扉を開けたのである。


*「ヴィーナス誕生」 アレクサンドル・カバネル 1863年作 オルセー美術館所蔵
(本作品は何点か描かれており、世界各地の美術館に所蔵されている。オルセー美術館所蔵作品が最も有名)

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