ART POWER
Part.3
民衆を導く自由の女神 ウジェーヌ・ドラクロワ
   
はじめてこの絵を見たのは23歳のときだった。
それはこの絵が所蔵されているルーブル美術館でだ。
大きな絵だった。ほんとにほんとに大きな絵だった。
そして大迫力の画面。
この圧倒的な作品を前にして、動けなくなった。
そして胸の奥から熱いものがみるみると溢れ出てきた。
それは胸いっぱいに広がり、目からこぼれ出た。
涙・涙・涙、ただ涙・・・。止まらなかった。
言葉に言い表せない想い。
それが一瞬にして全身を駆け巡ったのである。
己の信念を貫き通すため、たくさんの人を傷つけてきた。
本当に自分はこれでいいのだろうか、と疑念が渦巻いていた。
迷いが生じ、ためらい、揺れ惑っていた。
だが、この絵はそんな惰弱な精神を払拭してくれた。
そこに善悪はない、己の信じた道をただただ進め、と絵は語っていた。
それでいいのだ、と絵は自分を肯定してくれたのだ。
この一枚の絵は意志を貫き通す強さと尊さを教えてくれた。
何十年経った今もくじけそうになるときがある。
その度にこの画が脳裏に浮かび上がってくる。
そして声が聞こえてくる。
突き進め、と。

「民衆を導く自由の女神」 ウジェーヌ・ドラクロワ  1830年作 ルーブル美術館所蔵
芸術大国フランスが誇る名画。1830年の7月革命を題材に描かれた。1999年に来日。

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