メッセール・アンサルドの魔法の庭

マリー・スパルタリ・スティルマン

1889年制作 プリ=ラファエライト・インコーポレイテッド所蔵

 

 

 

 

メッセール・アンサルドとはイタリアの作家ボッカッチョの書いた物語の「デカメロン」に登場する人物の一人です。

彼は人妻ディアノーラに横恋慕し、彼女に言い寄った男でした。

ディアノーラはアンサルドの要求をはねのけるために、彼に無理難題をふっかけます。

自分の出したこの条件が果たせれば、彼の願いを叶えることを約束して・・・。

彼女の出した難問――それは『真冬の庭の草木に花を咲かせる』という到底実現不可能なものでした。

しかしアンサルドはなんとこれを成し遂げてしまうのです。

彼は魔法の力を使って、冬の最中に見事に花を咲かせてしまったのです

画面はその奇跡の場面を描いたもの。

そこには色とりどりに咲いた草花があふれ返っており、数人が陶然とした様子で見ている姿があります。

人々の纏っているケープや庭の向こう側の雪景色が見えなければ、季節が真冬だと思わないでしょう。

ディアノーラはその中央で呆然とした表情で立ち尽くしています。

それもそうでしょう、彼女はアンサルドにとんでもない約束をしてしまったのですから。

果たしてアンサルドは願いを叶えたのでしょうか?

いいえ、それが艶笑に満ちた物語「デカメロン」の面白いところです。

この後、途方にくれたディアノーラは自分の夫にこのことを打ち明けます。

すると彼女の夫は約束は果たさなければならないと言って、なんと妻が自分以外の男性と関係を持つことを許してしまうのです。

さらに驚くのはこの後で、そのことを知ったアンサルドは、信義に厚い夫の態度に感動し、自分の要求を取り下げてしまうのです。

実に面白い話ですね。教訓めいているようにも感じます。

 

 

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