Paul Delvaux

ポール・デルヴォー

ベルギー リエージュ出身

1897-1994

シュルレアリスム

 


 

 

 

海辺の夜

1976年

ポール・デルヴォー財団所蔵

 

 

 

 

 

 

「私の絵のほとんどの中で描かれる女性たちは、同時に女神でありミューズなのです」

これは、ポール・デルヴォーが自身で語った言葉です。

 

彼の絵に登場する女性らは皆美貌で、蝋や磁器のようななめらかな肌を持ち静かに光輝いています。

このミューズたちの全ては、デルヴォーの心の内に潜む一人の女性に帰依します。

その女性の名は、アンヌ・マリー・ド・マルトラール。

デルヴォーが32歳の時に出会った、初恋の女性です。

 

彼の初恋は残念ながら実りませんでした。

それは、彼の母親が猛烈に反対したからです。

デルヴォーの母は、一種異様とも思える愛情を注いで息子を育てました。

その彼女の彼に対する束縛は常軌を逸するほどでした。

彼女は息子にこう語りました。

「女たちは心を惑わす悪魔だ・・・体を与える代りに男を破滅させる」と。

 

エリートの家に生まれたのにも関わらず、気弱で内気だった彼は、母親には逆らえませんでした。

彼女は死ぬ際に、デルヴォーにタムと二度と会わないように言い残します。

彼は、その言葉を忠実に守り、タムと会わなくなり、その4年後には別の女性と結婚してしまうのです。

しかし、彼の心の中にはいつもタムがいたのです。

 

そして15年後、運命の転機を迎えます。

49歳になったデルヴォーは、ある小さな避暑地を訪れました。

そこで、あのタムと再会するのです。

彼は、妻と別れ、溺愛された母親との約束を破り、ついにタムと結婚します。

 

タムとの幸福な生活は、デルヴォーの制作意欲を高めました。

彼は次々に美しき女神たちの住まう幻想世界を描いていきます。

 

しかし、その創作活動も終わりを告げます。

彼の永遠のミューズであるタムがこの世を去ってしまったのです。

1989年、デルヴォーは92歳でした。

 

その後、彼は絵筆を握ることなく、その5年後にタムの後を追って生涯を終えました。

 

 


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